ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine

スマフォーの智恵が試される「帰ってきたヒトラー」

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録

人は結局自分が可愛くて、とても弱い生き物

お気付きの方もいらっしゃいますよね。このヒトラーの行為は全て、トランプ氏に通じるものだと思います。トランプ氏も同じように、過激な発言や独特の風貌でそのキャラクターが注目され、メディアが過剰に取り上げました。メディアに彼が登場すればするほど、その強気で自信満々の姿に人々を惹きつけられていったのです。

今のアメリカは多民族国家として、多様性が叫ばれていますよね。ですが、人間は心の底から他人を尊重して、お互いを認めることが本当に出来るのでしょうか? これが簡単に出来ることではないから、トランプ氏が勝利を収めたのだと思っています。人は結局自分が可愛くて、とても弱い生き物。

だから、自分の不幸や自分ではどうしようもないことを、自分とは全く別の誰かのせいにしてしまいたくなる。だって、それが一番楽だし、自分を守れるから。私だって、どんなに綺麗事を口にしても、本当はそんなことを思ってしまいます。だから、人々の心の底に根深く存在していた不平不満を、移民や別の人種のせいだと言ったトランプ氏に支持が集まったのでしょう。

©gettyimages

自分は怖くて言葉に出来なかったけれど、溜め込んでいた不満をトランプ氏が代わりに声高に叫んでくれた。そして、それが正しいと思えるような説得力や力強さを兼ね備えていた。そうなると、自分は間違っていなかったし、自分だけじゃなくて仲間がいたと安心出来る。そうやって、トランプ氏はヒーローになっていったわけです。

そして、二人の共通点をもう一つ。それは、二人ともメディアのパワーを味方にしたことです。この作品を観ていると、ヒトラーは、実在していた過去よりも現代のメディア社会の方が都合が良かったんじゃないか?(ヒトラーは当時も新聞などの高尚なメディアを利用することに長けていたとも言われていますが。)これは、トランプ氏も同じ。選挙戦中も常にTwitterやSNSを更新し続け、なにか発信する度に有権者はもちろん、テレビでも速報性のある格好のネタとして面白おかしく報道され話題に。

そうやって注目が集まることは支持者の増加に繋がったとされ、トランプ氏は「SNSを屈指して当選した初めての大統領」と言われています。特に現代のメディアは、何かに飢えているかのように刺激的で過激なものを好みますよね。それを上手く利用したのが、この二人だったんです。しかも、トランプ氏は家族を大事にしていて、茶目っ気もあり親しみやすい部分もある。そして、自身がアメリカン・ドリームを体現する成功者でもあった。人間らしくて愛すべき存在でもあり、憧れの存在にもなり、様々な趣向の人の心を掴んでいったのでしょうね。

そんな今だからこそ、FORZA STYLE読者のみなさんに聞きたい。

あなたがアメリカ国民だったら、トランプ氏とヒラリー氏のどちらの候補に投票しましたか? もちろんヒラリー氏だよ! と多くの方は言うでしょう。でも、トランプ氏勝利の大きな力になったのは「隠れトランプ派」だと言われています。彼らは社会的地位もあり、学歴や誇らしい実績もある、いわゆるエリート。メディアにも精通していて、情報感度やリテラシー・倫理観もとても高い。だからこそ、自分たちの地位や仕事を移民などに脅かされるのを恐れていたとされています。しかし、周囲からの反感や偏見を恐れて自分がトランプ派だと公には言えなかったそう。彼らが予想以上に多く存在していたから、大方の予想に反してトランプが勝利したと言われています。

そんな「隠れトランプ派」を日本社会に置き換えると、きっとFORZA読者のみなさまのような存在だと思うんです。彼らが冷静に社会や今後の経済発展のことを考えて、それだけでなく感情的にもなって、その上で、トランプ氏を選んだのです。そう言われると、あなたも少し考えてしまうのではないでしょうか? ただ闇雲に、トランプ氏が当選したことがおかしいとは思えなくなって来ませんか?

©gettyimages

そう、どんなに批判をしても予想外だと言ったとしても、アメリカ国民がトランプ氏を選択したということは、揺るぎない事実であり、その責任が国民全員にあることが確かなんです。ここで心が動いたあなたも、そして、未だにはっきりと結論が出せない私自身も…日本人には「選択の責任」という意識が薄いのです。私が冒頭で、「今回の選挙戦を見ていることが映画を見ているように感じた」という感覚の原因は、まさにこれ。私も含め日本人はどこかで、当事者意識とか選択することへの意識が薄い。遠いアメリカで起きていることであり、私たちとは関係ないこと。

まさに、どこかスクリーンの向こう側で起きていることのような。そんな感覚でいてしまうのです。この作品で、最初にヒトラーに目をつけたディレクターは、ある時ヒトラーの正体に気づいてしまい、自分が間違った選択をしてしまったことへの責任を強く感じます。自分の選択の重みと恐怖を痛いほどに感じるのですが、ここが作品の中で一番怖いシーンでした。目が覚めた時には、もう遅かったんです。

そう、今回の恋人が私に教えてくれたのは「選択の責任」です。自分の選択にきちんと自信を持てるのか、そしてそれに責任がとれるのか。何より、その選択が周りや世の中に流されてのものではなく、自分自身の本当の決断だったのか…。今までの自分を振り返り、反省することばかりだったと落ち込んでしまいました。

でも、政治を始め自分の選択には、正解がありません。誰を支持しようと、どんな意見を持とうと、それは自分の自由なんです。私たちには、選択を出来る自由がある。でも、自由だからこそ、その選択には責任が伴うことを忘れないでください。きっと、今の日本人のように自分の意志や責任感が薄い人ほど、ヒトラーのような強い独裁者に流されてしまいがち。だからこそ、この恋人との出逢いを、みなさんも自分の選択について考えるきっかけにして頂けると嬉しいです。

©gettyimages

ちなみに、私はニューヨークが大好きで何度か行っているのですが、初めてトランプタワーに行った時、そのゴージャスさに圧倒され口をあんぐり開けたまま見上げてしまったことを今でも覚えています。これがアメリカン・ドリームの象徴なのかぁ・・・と。でも、こんなにギラギラしていると、もしトランプ氏に何かが起きて反感でも買ったりしたら、すぐにテロとかの標的になっちゃうんじゃないか? と心配してしまいました。すると、ニューヨークに住む友達に、トランプ氏は既に十分反感や恨みを買っているから、もうそれ以上のことなんて起きるわけないよ! 相変わらず心配性をこじらせてるねと爆笑されました。

が、しかーし! まさかの今、トランプ氏が大統領になるという、それ以上のことが起きてしまいました。さらに、トランプ氏がホワイトハウスへ移住せず、トランプタワーをホワイトハウス化させたいと提案しているそうですが、そんなことしたら速攻でテロの標的になるからと絶対反対! とニューヨーク市警と騒動になっているらしい。あの時の私のこじらせた心配が、まさかこんな形で現実になってしまうだなんて・・・いやー、未来は何が起きるか本当にわかりませんね。

それこそ、まさに映画のような展開で、これから先もっとすごいことが起きてしまうんじゃないかと、更にこじらせた心配をしてしまっています。(でも、あれだけ金ピカだと、そもそもホワイトハウスとは呼べないんじゃないか?もし、あれだけのビルを白に塗り直したら、どれだけ時間とお金がかかるんだ?とか、更にこじらせた心配を本気でしてしまいました・・・)

それでは、今日も素敵な1日をお過ごしください♪

Photo:Riki Kashiwabara
Text:Natsuko Hidaka

Edit:栗原P

「帰ってきたヒトラー 」
価格:税抜:4800円(税抜)
発売元:ギャガ
販売元:ギャガ/・パブリッシャーズ
2016年12月23日発売・レンタル開始
http://gaga.ne.jp/dvd/hitlerisback/

【撮影協力】
ユーロスペース
渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS 3F
03-3461-0211
http://www.eurospace.co.jp/

【ひだか・なつこ】
小学校から大学までの16年間を附属の女子校で過ごした“こじらせ女”。(幼稚園もほぼ女子校だったので、それもカウントすると約20年間)幼い頃に家族の影響でエンターテイメントに目覚る。中学・高校をミュージカルに、大学生活を映画館でのアルバイトに捧げ、海外ドラマ廃人も経験する。映画やエンターテイメントとより多くの人を結びつけたいという想いから、放送局に入社。今でも毎週末は映画館で過ごし、これまで見た作品は約4000本。そんな映画への愛をこじらせ、コンシェルジュとして今回の連載を担当する。なつこのインスタグラムはこちら

 







COMMENT

ログインするとコメントを投稿できます。


TAGS

RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5