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FASHION 僕が捨てなかった服

“隠居系”山田恒太郎 第10回 「プラダ」「マイケル タピア」のカシミアストール

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人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。

スタイルの確立は、“バランス”と“調和”から

人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるのではないでしょうか。この連載では、本当に良い服、永く愛用できる服とは何かについての、僕なりの考えをお伝えしていきます。そして同時に、皆さんがワードローブを充実させ、各々のスタイルを構築するうえで、少しでもお役に立つことができれば嬉しい限りです。

さて、今回紹介するのは「プラダ」と「マイケル タピア」のカシミアストールです。前回は「グッチ」と「ラルフ ローレン」のカシミアセーターを取り上げましたが、セーター同様ストールも、カシミアのものを数多く購入しました。今手元に残っているのはカシミアのものばかりで、なかでもとくによく利用してきたのがこの2点です。

これは「プラダ」のものです。前回も書きましたが、「プラダ」は高品質のカシミア製品が充実していて、セーターはよく購入しました。このストールもとても良いカシミアが使われていて、しっとりとした独特のぬめり感と上品な光沢感があります。僕は通常クラシック系とモードブランドのアイテムを合わせる事はないんですが、唯一このストールだけは、おもにクラシックスーツを着る時に利用しています。

こちらは「マイケル タピア」のものです。「マイケル タピア」は2000年にパンツのコレクションだけでスタートしたユニークなブランドでした。後にラインナップに加わったスーツやコートなどを含め、モードの要素を取り入れながら、同時にハンドワークを多用するなど品質にも強くこだわる、好感の持てるブランドでした。

このストールは、以前大流行したパシュミナのような、薄手ですごく軽いものです。とにかく肌触りが優しく、使い心地の良い一枚。2m×1mという大判で、2重に巻いて軽く結ぶと、首元にボリュームが出て良い感じになります。レザーブルゾンに合わせるなど、もっぱらモード系のコーディネイトの時に利用してきました。

先程少し触れましたが、僕は通常、クラシック系とモードブランドの服を一緒にコーディネイトすることはありません。これは仕事でもプライベートでも同じです。テイストミックスによって新鮮で面白い着こなしが生まれる場合もありますが、この2つに限れば僕は否定的な立場です。互いに影響を与え合うという側面はあるにせよ、両者は根本的なところで服作りの哲学がまったく異なっていて、相容れないものだと考えているからです。

これまでこの連載で繰り返し書いてきたことですが、クラシック、モード、そして他のどのような装いをするにせよ、各々の個性に合った“スタイル”は必要です。そしてそのスタイルを構築する過程では、どのようなテイストの服を選んで、どのように着こなすか、あらかじめ絞り込むのが有効だと思います。

以前、フィレンツェの名店、「タイ・ユア・タイ」のフランコ・ミヌッチさんは、「スタイルのある大人の男であるためには、スーツ、シャツ、タイ、靴のバランスとハーモニーが重要」と仰っていました。これはなにも、クラシックスーツに限った話ではありません。

どのような装いをするにしても、テイストを揃えたコーディネイトによって、バランスや調和が生まれます。もしかするとそれは一見凡庸で、つまらないものかもしれません。でもその良さが、見る人が見れば分かるものであれば、それで充分だと思います。人目を引くことに主眼を置いた服の選択や、“ファッショニスタ”と呼ばれるような華美な着こなしは、少なくとも僕にとっては、まったく必要の無いものです。

Photo:Tatsuya Hamamura
Text:Kotaro Yamada

山田恒太郎(改め“隠居系”)
1990年代後半から『BRUTUS』、『Esquire日本版』、『LEON』、『GQ Japan』などで、ファッションエディターとしてそこそこ頑張る。スタイリストとしては、元内閣総理大臣などを担当。本厄をとっくに過ぎた2012年以降、次々病魔に冒され、ついに転地療養のため神戸に転居。快方に向かうかと思われた今年(2016年)4月、内服薬の副作用で「鬱血性心不全」を発症。三途の川に片足突っ込むも、なんとかこっちの世界に生還。「人生楽ありゃ苦もあるさ~♪」を痛感する、“隠居系”な日々。1964年生まれ。神戸市出身。



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