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タモリを2週間待たせた……。 ソラミミストは遅刻の常習犯だった

干場:まったく話は変わるんですけど、このことについてタモさんと話したりするんですか。

安齋:タモリさんには映画を撮る前から話してて、タモリさんに「僕ポルノの監督やるんです」って言ったら、「女優? 男優?」って(笑)。全然話を聞いてない(笑)。「いや監督です。僕で大丈夫ですかね」って言ったら、「大丈夫だよ、ずっと部屋の中で撮ればいいんだよ」って(笑)。「内容はそういうのじゃなくて雪山とか出てきちゃうんです、部屋だけでは無理なんですよ」って言ったら、「そうかぁ〜」って(笑)。

撮影の途中にもタモリさんに「ドローン使おうと思うんですよね」って言ったら、「いいね〜。ベッドシーンでベッドの上をドローンが飛ぶんだろう」って(笑)。「そんなドローン使い出来る人いないですよ」って、そんな話をしてましたね。1週間くらい前にタモリさんに「出来上がったんですよ」って言ったら、すげぇ喜んでくれて。でも『変態だ』ってタイトルなんですよね。まぁ、小学生がよく言う「H(エッチ)」って変態のHですからね。

干場:あ、そうなんですか。

安齋:もともとそうですよ。それでタモリさんは「いいんだよ、人間は全員変態だから、変態を否定する人は人間じゃないから」って言ってくれて。人って他の人と違う自分が好きだし、人と違うからこそ自分がある。今の自分が変態して未来の自分になることだってあるって意味も含まれているのかも知れないですね。

干場:変わっていくということなんですね。

安齋:でも、分からないです。タモリさんが言ってるのは、ほんとにコートを広げたらパンツを穿いていてない変態かもしれないですけどね。

干場:僕、タモリさんも大ファンですし、安齋さんも大ファンなんです。学生の頃今日はデート出来なくて女の子と遊べないし、男同士で集まるかっていうのがだいたい金曜日。11時半頃からタモリ倶楽部見て、空耳アワーもみんなで観ていました。あの裏話聞いていいですか、あれはご自身で選んでるんですか。

安齋:全然。あれは、もともと放送作家の町山広美さんとスタッフが企画したやつで、いわゆるTVの音響効果という仕事がこれから面白くなっていくというので、色んなものに音楽を当てたりするやつの一環だったんですよ、空耳アワーというのは。

小岩という駅の看板を写してて、ピンキーとキラーズの恋の季節「小岩、私の小岩〜」ってあてていくのを一緒にやってて、小岩のほうは「ボキャブラ天国」という芸人さんがやるシリーズのTVで、空耳の方は洋楽だけに特化したやつになったんですよ。僕はタイトルと曲目とバンド名と、なんて言ってるかだけをもらうんですけど、なんて言ってるかを事前に見ちゃうと面白くないから、ほとんど曲目とバンド名だけもらって、タモリさんと初見で観るんです。ほんとにタモリさんの感性で手ぬぐいとか色々決まっていくんです。

干場:長いですよね。何年くらいやってるんですか。

安齋:24年くらいじゃないですか。たぶん92年からやってると思います。一旦お休みというか、一度なくなったんですよ。

干場:どうしてですか?

安齋:それはTVを制作してる人達が「このコーナー4年もやってておかしくない?」って話になったそうなんですよ。だから僕花束もらって、スタッフが泣いてるシーンがあって、よくわからないですけど、僕も「ありがとうございます」ってちょっともらい泣きして家に花束持って帰って、しみじみしてたんです。でも、それを知ってか知らずか、ハガキを送り続けてる人達がいたんですね。今みたいにネットの投稿だったら、クリックしたらときに「そのコーナー終わりました」って出るだろうに、当時からハガキというスタイルだったんで、みんな分からずにそのままドンドン送ってきてくれて、「番組終わったのにこんな溜まっていくと、もったいないからやろうか」って話になった。か、どうかは知らないですけど(笑)。

干場:やめたのは、どのくらいの期間だったんですか。

安齋:1クールかな。その後また復活したんですよね。すごくバツが悪いですよ。花束もらって泣いてるんだから。僕じゃない人がやったり、スタイルが変わったりすればいいのに、「前と同じでやります」って言うから、すごい恥ずかしかったですけど、そこから20年くらいやってますね。

干場:面白いですね。

安齋:タモリ倶楽部って、タモリさんのための倶楽部なんですよ。タモリさんのためのタモリさんがやってる倶楽部なんです。だからレギュラーはタモリさんだけで、タモリさん以外はレギュラーとは呼ばないんですよ。ここ5年くらい前から準レギュラーっていう枠ができましたけどね。20年近く経たないと準レギュラーはもらえないんです。タモリさん自身が真剣に本当に興味を持ってやる、そのための番組なんで。

干場:コーナーのロケーションですが、どっかで待ち合わせするんですか。

安齋:僕はどっかで待ち伏せするだけです。あるいはタモリさんが行くところに行ったりとか。

干場:テレ朝に行くわけじゃないんですか。

安齋:全部テレ朝にしてもらえると、楽なんですけどね。だから遅刻もままあります。最初の4年間はこんなに続くと思わないじゃないですか。それに僕自身は仕事があるんで「デザインや絵の仕事もあるので、そっちの締め切りで遅れることもあるから、時に遅刻は申し訳ないですね」とは、ちゃんと言ってあるんですよ。でも製作側からは「そんなこと言わないで、ちゃんと来てくださいよ」って言われて。

干場:ちなみに、最大何分の遅刻があるんですか。

安齋:2週間遅刻くらいですかね。

干場:2週間!

安齋:収録1回飛ばしたから、2週間の遅刻です。それは怒られました。いや、正確に言うと、それは怒られなかったです。僕酔っ払って、事務所の床暖房が気持ち良くてそのまま寝てしまって、気が付いたら収録時間が過ぎてて、結局収録に行けなかったんですよ。

干場:じゃぁ、タモさんの待ちぼうけということですか。

安齋:それで、タモリさんすごく怒ってるんだろうなと思って次回行ったら、怒ってなかったんですよ。「あなた、どうしたの」って、事情を説明したら「そんな事もあるよな」って感じだったんですよ。その日は4週撮りなんで、前に飛ばした前の衣装をタモリさんがわざわざ用意してくれてて、それを着てくれて撮影して、じゃあ次は2週分をこれから撮ろうってなったんです。そこで背景を変えるために移動することになったんですよ。「次は、13時30分からです」って言われたのを、聞き取れなくて「3時30分か、時間すげぇあるじゃん」と思っちゃって。「じゃぁ、一旦事務所に戻って仕事しよう」ってタクシーに乗ってる途中で電話がかかってきて、慌てて戻ってきたらタモリさん、その時は本当に怒ってた。

干場:遅刻してもタモリさんは怒らないっていうのを、TVで観たりしていたんですけど。例えばSMAPの香取くんが遅れちゃったりしても、怒られなかったってエピソードとか。でも、安斎さんはそこで怒られたんですね

安齋:今までは「仏のタモさん」だったんですけど、そこから「生活指導のタモさん」ですからね。タモリさんが「急にあなたは、だいたいね」って、生活そのものから注意されました。「あなたはだいたい、時計を持ってない」とね。

干場:持ってないんですか。

安齋:はい。タモリさん曰く「あなたね、時計を持たないということは時間に縛られたくないという哲学?」って。「いや、持ってるんですけど、ここにしてると面倒くさいんですよ」「面倒くさいんでしょ、あなた時間を面倒くさいと思ってるんだよね」って、やり取りがあって。最後に「じゃぁ今度、あげるよ時計」って言われたんですよ。

僕それを聴いて、あることを思い出したんです。その11ヶ月くらい前に『笑っていいとも!』に中嶋悟というF-1ドライバーが出た時に、彼のオリジナル時計をタモリさんにあげてたんですよ。だから「タモリさんが持ってる時計は相当いいだろう、やったー」って思って、その怒られながらも楽しみになっちゃったんですよ。でも、1ヶ月経っても2ヶ月経っても時計の「と」の字も出ないんですよ。だから僕、すごい痺れを切らして、「タモリさん時計をくれるという話はどうなったんですか」って聞いたら、「あんた何を言い出すの。そんなこと僕言ってないでしょ」って言われて。だから、遅刻したときのやりとりを説明したら「それは方便だろう。あなたがあまりに遅れるから言っただけで、遅刻して私を困らせる上に時計まで取ろうとしてんの」って、すっげぇまた怒られちゃいました。でも、普段はほんとに怒らないんですよ。

干場:そうですよね、TVの情報によると。

安齋:そうなんです。すごい不思議ですね。懐が深い感じというか。何に対しても真剣ですから。例えば「こんなの持ってきたんですよ」って渡すと、全部その場で読みますからね。ちゃんと読んでくれて、理解して、そういうひとつひとつがすごい丁寧です。何て言うんだろう、中途半端にしないというか、曖昧にしないというか。

干場:全て理解しようとするんじゃないですか。頭いいですもんね。

安斎:そうなんですよね。ひとつひとつ何事もちゃんとクリアにしていく。今みんな、いい加減じゃないですか。後で調べればいいくらいに、きっと思ってるんですよ。でも、タモリさんは真面目さみたいなものと、あとその場のニュアンスや感覚みたいなもので、例えば音楽でも何でもそのままリズムに入って行けたり、聞いたことのない曲であろうと曲のサビや盛り上がりとかも一瞬にして感知するような。

干場:感受性が豊かなのかも。

安齋:ほんと羨ましいと思いますよ。

干場:「空耳アワーにどうして自分がキャスティングされたんだ」とか思ったりしたんですか。

安齋:もともと、そのタモリ倶楽部というのには知り合いが構成作家で入ってたりとかしてたんですよ。よく観てたし、すごい好きだったんですけど、自分が出るとかは全く思ってなかったんです。僕を知ってる次の世代の人たちが放送作家になった時に、「安斎さんがいいんじゃない」ってことで。たまたま呼ばれただけです。でも、最初は断ったんですよ。

干場:え、そうなんですか。

安齋:好きな番組だし、知り合いも多い分、恥ずかしいじゃないですか。ましてや自分の企画でもないし、自分が絡んでるわけでもないから、そこにそうやって乗っていくってタレント枠みたいな感じじゃないですか。だから、やだなぁと思って。

干場:まぁ、ちょっと異色ですけどね。

安齋:僕の仕事じゃないと思って、断ろうとしてたんですけど、断ろうと思っていた打ち合わせに遅刻しちゃって、断り損ねたんです。自分の事務所に呼んどいて1時間待たせてしまったんです。彼らは1時間しか時間がないって言ってるのに…。「待たせたあげく断るわけじゃないでしょうね」って言われて、「はい、1回だけやらせてください」と言ったら、「1回? 1回というのはこっちが決めることで、収録しても放送されない場合もあります」って(笑)。

確かにそうですよね。でも、当時タモリさんにヅラ疑惑とかも出てきて、「髪の毛が豊富な人はコンプレックス」って言っているのに、その横で俺がダラーっと長いロン毛で、さらにタモリさんの嫌いなダジャレを言うもんだから、すごいツッコまれましたよ。昔はタモリさんダジャレが嫌いだったんです。今はタモリさんご自身が言ってますけど。

干場:なるほど、ヅラ疑惑ありましたね。

安齋:髪の毛で言えば、タモリさんに「あなたはいつまで髪の毛を伸ばすつもりなの?」って聞かれて「僕切ろうと思ってるんですよ。10㎝か15㎝くらいかな」って言ったら、「それは切ったことにならないでしょ。前から思っていたけど、短くした方が絶対良いから」って言われて。

たまたまその会話をスタッフが聞いてて、「安齋さん、タモリさんがあんなにノってることは珍しいから、1本撮れますよ」って撮ることになったんです。僕はスタッフにも「長髪に見えなくなるのが嫌だから、顎より上で切らないでよ」って言ってたんですね。

まず最初に、タモリさんとか、きたろうさんとかみんなでハサミを持って「切るぞ切るぞ」ってやって、「やめてくださいよ」って言って髪型とか決めて、番組的には段々と切っていって、色んな髪型にしていこうとしてたんですけど。きたろうさんが、番組の収録が押してるので「めんどくせぇなぁ、切っちまえばいいんだろう」って、いきなり前髪をもって大幅に切ったんですよ。シャギーチャンピオンが「もうここからだと、どうにもなりませんよ」って言うもんだから、最終的に「安齋さん、プリンスが好きですよね。じゃあパーマかけましょう。でも、パーマやってる時間がないですね。じゃあせめて〜プリンスカットにしましょう」ってなって。七三の皇太子ヘアーにされたんです。

干場:そっちのプリンス(笑)。

安齋:スタッフに「『安齋さん、プリンスって言ってもこっちのプリンスじゃないよ』って言ってください」って言われて。もうそれは衝撃的でしたよ。髪の毛を横から無理矢理持ってきて、プリンスカットにもなれないくらい切りすぎちゃったんですから。

干場:それ、写真か動画か差し込みますよ。

安齋:ありますよ、きっと。(編集部注:すみません、ありませんでした)

後半に続く!

Text:makiko yamamoto

Edit:栗原P



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