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FASHION

【連載】“隠居系”山田恒太郎の
僕が捨てなかった服
第6回 「サルトリア・アットリーニ」のカシミアコート

2016.10.3
2016.10.3

最高のスーツに、最高のコートを

人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるのではないでしょうか。この連載では、本当に良い服、永く愛用できる服とは何かについての、僕なりの考えをお伝えしていきます。そして同時に、皆さんがワードローブを充実させ、各々のスタイルを構築するうえで、少しでもお役に立つことができれば嬉しい限りです。

さて今回は、イタリア、ナポリの「サルトリア・アットリーニ」のカシミアコートです。この連載でこれまでに紹介してきた「A.カラチェーニ」や「リヴェラーノ&リヴェラーノ」は、イタリアでも最高級のサルトリア(仕立て屋)です。一方この「アットリーニ」は、同じナポリの「キートン」などと並んで、既製服においてイタリア最高クラスとされています。ですので、前者と後者はともに“最高”と形容されていても、分けて考える必要があります。

このコートは、膝丈のシンプルなチェスターフィールドタイプ。カシミア100%のヘリンボーンです。いつ購入したのか記録が残っていないので正確には分からないのですが、「リヴェラーノ」のスーツをオーダーしたのより前なのは確かなので、18年以上着続けていることになります。

ブランドも素材も高級ですから、これを買う時はさすがに逡巡しました。でも同時に、「これはずっと着続けるだろう」という確信もありました。実際、毎年冬には、このコートがもっとも活躍しました。今振り返ってみても、あの時、思い切って手に入れておいて良かったなと思います。

「アットリーニ」のスーツやコートは、何がそんなに優れているのか。前回も書きましたが、“良いスーツ”は、とにかく着心地が軽いんです。僕が本当に良いスーツとは何かについて最初にしっかり学んだのは、アットリーニ家の皆さんからでした。初めてナポリの「アットリーニ」の社屋を訪ねたのは1998年の1月です。その際、名サルト(仕立て職人)として広く知られるチェーサレ・アットリーニさんは、こう仰っていました。

「スーツのなかでは袖付けと襟がもっとも重要だ。着心地を良くするためには、高い位置で袖付けをしなくてはならない。襟は座ったときでも後ろに抜けず、しっかり首に収まらなければいけない」。

チェーサレさんの次男、マッシミリアーノさんもこのように仰っていました。

「良いスーツの条件は袖の位置が高く、襟と肩が柔らかく身体に沿うスタイル。そして完璧な縫製のテクニック。着心地と、着た時の襟の収まり具合を見れば、良い服と悪い服を見分けることができる」。

この“首に収まる”というのが、もっとも重要なポイントです。“首に乗る”と言い換えれば分かりやすいでしょうか。肩ではなく首に乗るから、肩の凝らない、軽い着心地が生まれます。首から肩にかけて身体に吸い付くように沿って、綺麗な曲線を描く。日本ではよく“富士山のような”という表現が使われます。ここを見れば、良いスーツかそうでないかもひと目で分かります。

このコートも同じです。そこそこ厚手の生地で、重さはそれなりにあります。でも実際に着るとそんな重さはまったく感じないですし、気にもなりません。ずっと着ていても疲れることなどなく、本当に楽です。

連載の初回、「A.カラチェーニ」のスーツを紹介した際に、スーツに求めるべきは「スタイル」と「エレガンス」だと書きました。「普遍的な美しさ」とも書きました。でもこれらをスーツで表現するためには、仕立ての良さが不可欠です。つまり仕立ての良さは、“着心地の良さ”と“見た目の美しさ”、両方のために欠かせないのです。

仕立ての良いスーツやコートを作るには、細かい作業、手作業が必要で、時間がかかります。必然的に価格も高くなります。でも永く着られるものを追い求めると、避けることはできないのです。以前、イタリアのサルトや最高級スーツメーカー関係者の、「安いスーツを2着買うなら、高いスーツを1着買え」という言葉を紹介しました。この言葉は、ここでも生きてきます。「安物は高物」、「安物買いの......」などという言葉は、まさにこのためにあるのではないかとも思えます。

Photo:Tatsuya Hamamura
Text:Kotaro Yamada

山田恒太郎(改め“隠居系”)
1990年代後半から『BRUTUS』、『Esquire日本版』、『LEON』、『GQ Japan』などで、ファッションエディターとしてそこそこ頑張る。スタイリストとしては、元内閣総理大臣などを担当。本厄をとっくに過ぎた2012年以降、次々病魔に冒され、ついに転地療養のため神戸に転居。快方に向かうかと思われた今年(2016年)4月、内服薬の副作用で「鬱血性心不全」を発症。三途の川に片足突っ込むも、なんとかこっちの世界に生還。「人生楽ありゃ苦もあるさ~♪」を痛感する、“隠居系”な日々。1964年生まれ。神戸市出身。

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