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綾野剛主演
「日本で一番悪い奴ら」白石監督が語る、「日本映画界の悪い奴ら」

2016.7.4
2016.7.4

「日本で一番悪い奴ら」 衝撃の問題作はこうして生まれた

「英雄がいる時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」。そんな警句を愛したのは寺山修司だが、いまの映画業界には、こんな言い換えも出来るかも知れない。「悪役がいる時代は不幸だが、悪役を必要とする時代はもっと不幸だ」と。

前作、「凶悪」で、実際に起きた殺人事件を通して目を背けたくなるような人間の業を描き、映画賞を総なめにした白石和彌監督。魅力的な「悪役」が少なくなった映画業界で、ピカレスクにこだわって人間の業を活写する希有な監督だ。

目力バツグンの白石監督は、原作の舞台となった北海道出身。
 
 
 
そんな白石監督の新作、「日本で一番悪い奴ら」が全国で大好評ロードショー中だ。今回白石監督が手がけたのは、実話に基づく犯罪映画である。
 
日本警察史上最悪の汚点と呼ばれる「稲葉事件」。北海道警の現職警察官が、自ら拳銃や覚せい剤の密売に手を染め、挙げ句の果てに、薬物中毒になって銃刀法違反と覚せい剤使用、営利目的所持で警察に捕まるという前代未聞の事件を、主演の綾野剛が鮮やかに演じ切り、笑って泣けて、余韻の深い作品に仕上がった。
 
以下、柔和な笑顔と鋭い眼光を併せ持つ、白石監督のインタビューをお届けする。
 
――なぜ今回、「稲葉事件」を題材に据えたのでしょうか。
 
白石監督「脚本の池上純哉さんが、事件で逮捕された元警察官、稲葉圭昭さんの告白本『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社刊)を読んで提案してくれたんです。昔から日本でギャング映画を撮りたいと思っていたので、警察を舞台にそれがやれたら面白いなと閃いたんです」
柔道の猛者である、諸星警官は柔道家特有のギョウザ耳。この特徴から、思わぬトラブルが勃発したり……。
 
 
 
――前作の「凶悪」では、全編に暗い通奏低音が流れていました。今回の題材である「稲葉事件」も、死者を出したほど救いようのない実話ですが、疾走感と笑いがちりばめられていて、青春群像劇としても楽しめました。
 
白石監督「前編はハチャメチャな刑事の笑えるストーリーなんですが、途中ですべてがゆっくりと暗転していく分水嶺があるんです。その薄気味悪さも楽しんで欲しいと思って作りました」
 
――今作もそうですが、過激な暴力描写や、悪役に迫る手法がぬきんでていると感じます。逆に言えば、白石監督が目立ちすぎるほど、ピカレスク映画が減ったということでもあるのでしょうか。
綾野剛演じる諸星警官が、Sと呼ばれる捜査協力者と拳銃をぶっ放すシーン。
白石監督「『仁義なき戦い』の頃とは比べようもないですが、業界自体が自主規制していることも影響していると思います。『問題作は客が呼べない。暴力映画は儲からないから、マンガ原作だけ作っていればいい』という映画業界の流れもあります。でも究極を言えば、どんな映画でも面白ければお客は必ず来る。そこをコンプライアンスを言い訳にして逃げちゃダメです」
 
――コンプライアンスの自縄自縛になるのは、どのメディアも抱えている問題ですね。
 
白石監督「例えば、テレビ局が制作する『テレビ映画』の場合、テレビ局の論理が入ってきてしまう。すると銀行強盗をした犯人が、慌てふためきながらも馬鹿正直にシートベルトを締めて発進するという間抜けなシーンができるんです。映画の中ですら、法令遵守が最優先されるんですよ」
 
――冒頭のカーチェイスで、綾野剛が演じる刑事が生真面目にシートベルトを締め、先輩にドヤされるシーンがありました。皮肉が効いていますね。主演の綾野さんと仕事をした印象を教えて下さい。
ノンフィクション原作には、フィクションを超えた不条理がある。そこが面白いと語る白石監督。
白石監督「綾野(剛)君は凄く頭がよくて、素直な演技をする役者さんです。いろいろなタイミングが重なって、一番ノリに乗っている俳優と、凄い原作で最高の映画が撮れたと思っています」
 
――ヤクザを演じた中村獅童さんや、主人公を悪の道に引っ張り込んだピエール瀧さん、背徳的な美人府警、瀧内公美さんなど、グイグイと引っ張り込まれるような役者陣も、今作の魅力ですね。中でも綾野さんの舎弟役「太郎」を演じた、YOUNG DAIS(ヤング・ダイス)さんが凄かったです。
 
白石監督「とても難しい役どころで、オーディションをしてもピンと来る人がいなかったんです。そんなとき『TOKYO TORIBE』という映画で異彩を放っていたヤング・ダイスさんを思い出してオファーしました。適役を見つけるのに苦労した分、バッチリハマってくれました」
 
――最後に、前作からタイトルに共通して使われている『悪』という言葉についてお伺いします。監督にとって、一番の『悪』とはなんでしょうか。
白石監督「綾野君が演じた諸星警官も、警察に入った当初は、どこにでもいるありふれた、清潔だけが取り柄の青年でした。そんな青年が個人を超えた『組織』に同化して、ドンドン汚れていく。そんな個人を汚している組織のメンバーも、顕微鏡を覗くように一人一人を観察すれば、自分の持ち場で精一杯仕事をしている凡人に過ぎず、悪人も善人もありません。組織と同化して、思考停止に陥った人間が善悪を超えた論理ですること、そしてそれをさせる組織こそが、『究極の悪』だと思います」
白石監督は、若松孝二監督の門下生。この大作を、わずか一ヵ月で撮り終えたというから、その辣腕ぶりに驚く。
えげつないほどの暴力シーンや薬物の乱用シーンなど、思わず力の入るシーンの連続。しかし、時折差し込まれる不道徳な笑いが、独特の緩急を付けている。
FORZA STYLEのプロデューサーが本気でハマった「日本で一番悪い奴ら」。魅力的な悪役たちのツラを拝みに、ぜひ劇場へ足を運んでほしい。鑑賞後、あなたの顔つきもきっと「悪役」に変わっているハズだ。
 
Photo:Naoto Otsubo
Text:栗原P

 

2016年6月25日公開『日本で一番悪い奴ら』

監督:白石和彌  
脚本:池上純哉  
音楽:安川午朗
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社文庫)
出演:綾野剛
   YOUNG DAIS 植野行雄(デニス)・矢吹春奈 瀧内公美
   田中隆三 みのすけ 中村倫也 勝矢 斎藤 歩
   青木崇高 木下隆行(TKO) 音尾琢真 ピエール瀧 ・ 中村獅童
配給:東映・日活   


全国公開中

■公式サイト:http://www.nichiwaru.com
 

    

 

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