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LIFESTYLE Special Talk

覆面コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチが惚れた
「絶好調! マツダの仕事哲学」

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——仕事がうまくいく7つの鉄則として、「小さい事を恥じない」「ライバルすらも褒めまくる」「ブレない価値の基準を持つ」「相手が喜ぶことを常に優先する」「ほかの真似を決してしない」「熱意だけではダメ。交渉条件を必ず用意する」「世の中の流れに簡単に乗らない」を挙げられています。取材を通じて、ほかにも鉄則と呼べるようなものはありましたか?

マスク越しの声はやや曇っているが、舌鋒は鋭い。

おっと、そこですか。じつは最初は「9の鉄則にしよう」とか、「いや11だ」とか言っていたのを絞り込んだんです。今日も同席している編集のムーチョS馬さんから、項目の整理をせっつかれているうちに、じりじりと時間がなくなって、11が9になりました。さらに僕があまりにやらないんで、さらに落ちて最終的に7になりました。

まあヨタはともかくとして、彼らの姿勢に「妥協しない」はありますね。また「しつこくしつこくしつこく、諦めない」こともあるでしょう。

その一方で、「前言撤回する」とか「朝令暮改」オッケーなんていう傾向もありました。結局、ひとつの項目を挙げると、それに矛盾するものあるので、整理をした結果、7つに絞り込みました。

「働き方」という意味で、僕が最も印象に残っているのは、自分のやりたいことを実現するために、会社に土下座したというエピソードです。

土下座するという事実がまずすごいし、他社に同じエピソードがあったとしても、ふつうはNGで、書かせなかっただろうと思います。「さすがに書かないだろう」という発言でも無視して書いてしまうのが僕の流儀。マツダの広報でも書かれてしまったことが問題になったようです。ただまあ、フェルだから仕方ないねと言っていたら、クルマが売れた! 

どういうことかというと、連載を読んだ人がディーラーに行って、プレマシーというクルマを指名買いしたんです。営業がほかにもっと新しいクルマもありますがと言ったら、連載のコピーを見せて「これ知らないの、だから欲しいんだよ」と譲らなかった。販売店の営業は僕の連載を読んでいなかったから、ワケわからなかったみたいですが。それが広報にフィードバックされて、一件落着です。

今のクルマはマツダも含めてどこもいいクルマを作っています。エンコはしませんし、燃費もいい、ドライバビリティだって十分。となると、なんでこのクルマを買うのか、というストーリーが必要ですよね。だからホンダはF1をやる。じっさい関係は薄いかもしれないけれど、このシビックはたどっていくとF1につながる、というストーリーがあるから買うわけです。ヨーロッパのメーカーが一生懸命レースに参戦するのも同じ理由です。例えば、ルマンで優勝したアウディだってハイブリッドの方式違いますし、それは言いっこなしです。うちのクルマはレースで勝っているクルマの技術がフィードバックされた市販車だというのが、お客さんに対するストーリーとして購入のモチベーションになる。

連載記事をコピーしたお客が「この車をくれ!」。これほど強いPRはほかにないだろう。

 

土下座話に戻りますと、そこまでして作り込んでいるクルマ乗ってみたい、というモチベーションになる。同じミニバンを買うんだったら、トヨタはたぶん土下座してまで作ってません。じゃあストーリーのあるプレマシーを買おうとなる。「売れた」報告が広報に届いたのは2、3件だそうですが、何も告げずに買った人もいたはず。あるいはフィット、ヴィッツじゃなくてデミオを買う人も。そういうストーリーを感じてもらえたんだと思います。

僕自身も思い切って書いたなというのもありますし、プレマシーの開発者の虫谷さんもよく言ったなと思います。

ですからマツダの人間は腹が決まっています。そして広報も僕のノセ方が上手です。

どこのメーカーかは言えませんが、「どうやったら同じように書いてもらえますか? 失礼ながら条件を聞かせてください」という話が来ました。要するに「お金もらって書いているんじゃないか」という疑いを持って聞いてくるのだと思いますが、もちろんそんなことは一切ありませんし、丁重にお断り申し上げましたが。

僕の場合は、やる気が筆に顕著に出てしまうんです。マツダのあとのドイツ車とかスゴかったですね。「朝起きました、朝顔に水をやりました」 なんて、絵日記みたいな文章になっちゃう。

NEXT⇒スーパーカーよりも手の届く国産車がウケる



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