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「セックス前の食事も、仕事の会食も同じ」
ソクラテスならこう言うね
〜恋愛・ビジネス相談所〜

2016.4.16
2016.4.16

セックス前の食事ではセックスのことしか考えていないにも関わらず...?

カント、デカルト、ニーチェにソクラテス...。歴史上の哲学者たちは、あまりに偉大ですが、いまその肉声を聞くことはできません。

でも安心してください。分厚い哲学本に閉じ込められた賢人の知恵を、わかりやすく教えてくれる哲学者が、この極東の日本に存在します。その名も、小川仁志先生。

人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。小川先生は京大卒業後のバブル華やかなりし頃、「伊藤忠商事」に入社するも退職し、その後4年ものフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後哲学者となった異色の経歴の持ち主です。

そんな人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。さて、第8回目の相談者のお悩みを紹介しましょう。

Q.営業職のOLですが、会食が辛くて辛くて...。

営業職の27歳です。私は営業職ですが、正直会食が大嫌いです。好きでもない取引先の人と面白くない会話をかわし、ご機嫌をとるのが辛いです。

別に会食をしなくても仕事はとれるのに、なぜわざわざ2〜3時間も時間をかけて会食をしたり飲んだりするのかがわかりません。こんな性格で営業職を楽しむにはどうすればいいでしょうか。

A.セックス前の食事も、仕事の会食も同じと考えよ!

私も営業職を担当していたことがあるので、この悩みはよくわかります。なくてもいいのにと思う時でも、必ず夜があるんですよね。

時間どころかお金の無駄だと感じることすらありました。相談者さんがいわれるように、営業職としてちゃんと仕事がとれるならいいじゃないかと。

ところが、会食は営業職に限らず、どんな仕事にもある程度はついてくるものです。そうなると、益々不要だと思えてくることでしょう。こっちが接待するときでも、はたして相手が本当にそれを望んでいるのかどうか。早く帰りたいかもしれないじゃないですか。周りにも同じようなことをいっている人はたくさんいます。本当はみんな嫌なのでは?

でも、でも、でも、でも、そんなの関係ないんですよね。そこにはきっと別の理由があるに違いありません。そう思って、よ~くレストランで観察してみると、同じような仕事の会食のグループのほかに、ちらほらカップルがいるのが目に入ってきます。なかにはまだ付き合って日が浅いカップルも。

どうしてわかるのか? それは表情を見ていればわかりますよ。目がキラキラ、いやギラギラしていますから。二人ともセックスのことしか考えていません。なのにゆっくりと食事を楽しんでいる...かのように装っている。付き合いが浅いと、いきなりホテルに直行するわけにもいかず、やはりこうして食事をするのです。だいたい「今度ホテルでもいかがですか?」なんて誘う人間はいません。普通は「今度お食事でもいかがですか?」でしょ。本心は別でも。

こんな回りくどいことをするのには理由があります。それは体だけが目的ではないことを示すためです。また、自分が関係をもつ相手をより知るためでもあります。風俗じゃないですから、さすがに相手のことを何も知らずにベッドインするわけにはいきません。逆にそんなことしたら怖いですよね。お金をとられるんじゃないかとか、殺されるんじゃないかとか。まるでゴルゴ13みたいですが、多少はそういう不安が生じると思います。だからまず食事をするのです。

あれっ、これって営業の会食に似てませんか? こんなふうに別の現象から原理を見出して、問題を考える方法を構造主義といいます。その完成者ともいわれるフランスの文化人類学者レヴィ=ストロースの構造主義によると、ある仕組みの中の要素を変換しても状況が変わらない場合、そこに構造があるということになります。

わかりやすいのは神話です。神話には、登場人物が違ったりするだけで、似ているものがたくさんあります。これはまさに要素を変換しても枠組みが変わらない例です。出てくる人や物が違うだけで、構造は同じ。

つまり、同じ教訓やメッセージを伝えるものがどこにでもあるということです。文化人類学者のレヴィ=ストロースは、未開社会をつぶさに観察することでこの原理を発見したわけですが、同じようにレストランをよく観察すると、先ほどのカップルと仕事の会食の比較が可能になります。

つまり、カップルがどうせセックスするだけなのにその前に食事をするのは、体だけが目的ではないことを示すためであり、また自分が関係をもつ相手をより知るためです。ここでカップルの食事という要素を仕事の会食に変換し、かつセックスという目的を仕事の成果に変換してみましょう。そうすると仕事の会食でも、やはりお金などの成果だけが目的ではないことを示す必要がありますし、また自分が関係する仕事相手をよりよく知る必要があるといえるのではないでしょうか。つまり同じ構造が見られるのです。

このように、構造主義的にとらえると、いくらセックスができても食事をする必要があるように、いくら仕事がとれても会食をする必要があることがわかると思います。無駄に思えて、実は無駄ではないということです。もちろん、それで苦痛がなくなるかどうかは別問題です。ただ、ここでもカップルの食事に重ね合わせて考えてみてください。セックスの前の食事はデートなので、普段食べられないようなおいしいものを食べるいい機会だと思います。多分奮発していることでしょう。それなら、食事も楽しんだほうが得に決まっています。おいしいものを二度味わうと思えばいいのです。

そして構造主義的発想からは、会食でも同じことがいえることになります。お客さんとの食事では、普段食べられないようないいお店に行ったりします。だから食事そのものを楽しめばいいのです。何を隠そう、私もいつもそうやって接待を楽しんでいました。自腹で食べたらとても高くつきますからね。相手のご機嫌をとるのも、興味のない話を聞かされるのもそうです。デートの際、恋人のご機嫌をとる必要もあれば、興味のない話でも合わせておく必要がありますよね。これは自分以外の他人と一緒にやっていくための忍耐力をつけるためだといえます。仕事でも同じなのではないでしょうか。

Text:Hitoshi Ogawa
Photo:雪ボタン、Getty images

【小川仁志】
1970年京都市出身、京都大学法学部卒。伊藤忠商事に入社するも退職し、4年間のフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後名古屋市立大学大学院博士後期課程を修了し、博士号取得。2015年には山口大学国際総合科学部准教授となる。専門は公共哲学、および政治哲学。商店街で哲学カフェを主宰するなど、市民のための哲学を実践している。哲学に関する著書多数。 

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