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FASHION 干場に着させたい松竹梅

ビームス中村達也さんがオススメ!ネイビースーツの松竹梅とは?

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プロが唸る! 最高級イギリス生地を使用した「ノーストレス」ナポリメイド

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干場:さて次の松クラスのスーツはどちらのものでしょう?

ナポリの名店ロンドンハウスにて辣腕を振るったマスターテーラーを祖父に持つ、ヴィンチェンツォ・アットリーニがディレクターを務めるブランド、スティレ ラティーノ。ハンドを駆使したナポリらしい一着。ネイビー×ブラウンストライプ3Bスーツ28万円/スティレ ラティーノ(ビームス ハウス丸の内 ☎03-5220-8686

 

中村:こちらはスティレ ラティーノのもので、28万円です。これはフレスコという、強撚糸を平織りした素材を採用しています。夏でも通気性がよく、かつシワになりにくいという特徴があります。最近、イタリアでは、このような生地で作られたシワになりにくいトラベルスーツをよく見かけます。これはイギリスの生地ですね。

干場:スティレ ラティ-ノは、どういったブランドなんでしょうか。

中村:アットリーニファミリーの長男ヴィンチェンツォが興したブランドなんです。

干場:アットリーニらしさは感じますか?

中村:アットリーニとは全く異なります。ただ、ソフトな着心地や綺麗にラインが出るところや肩のしっくりとした納まり具合、クラシックな服なんだけれどセクシーさがあり、まさにナポリの服! という印象ですね。あとイタリアのドレスクロージングは、テーラーでもプレタでもイギリスの生地を使うのが最上級、とされていて、こちらもイギリスの生地を使用しています。

干場:確かにこの生地、さらりとしていていいですね。

 

中村:プロや服好きの人はイギリス生地が好きなんですよね、私を含め。

干場:その心は何なのでしょう?

中村:やはり仕立て映えがするんです。イタリアの生地は緯単糸を使ってドレープさせる生地が多く、柔らかく織ってあり、ぬめりのある表面感で女性的かつ優しい印象のものが多い。イタリアでもアルマーニのようにドレープが出る服がありますよね。それとは対照的にイギリスの生地は経と緯の所謂双糸という2本取りで織られていてしっかりしているんです。
緯単糸の生地も美しいのですが、サルトリアと言われるテーラリングの世界では、イギリスの生地で仕立てた、胸周りにボリュームがあり、腕のラインをぐっと曲げて作られたものがスタンダード。それを現代的に表現しているのが、このスティレ ラティーノなんです。細身なんだけれどセクシーでグラマラスなラインが、これくらいの価格帯になってくると手に入ります。

干場:これはナポリメイドなんですか?

 

中村:そうです。ハンドで仕立てている箇所もあるので、とても柔らかい雰囲気で、手仕事でしが味わえないラインが出ています。例えばアームホールを小さくしつつも窮屈でない着心地やボリューム感のある胸からシェイプしたウエストにかけてなんて絶妙です。私もスティレ ラティーノのスーツは何着か持っているのですが、着ていて本当にラクでノーストレスなんです。腕も上げやすくデスクワークの際、背中がきつく感じることもありません。テーラーリングがきちんとしている証拠ですよね。ただ難点はハンドのため、裏地や衿の後ろなどがほどけやすかったりするんですね(笑)。

干場:そんな甘さもイタリア的ですね。このネイビーも少し白っぽいというか明るい生地ですね。

中村:先染めの生地なので表情がありますよね。ブラウンのストライプが入っていて。好きでしょ、これ?

干場:大好きです。私の好みにどんぴしゃですね。お勧めいただき、ありがとうございます。ここでビジネスマンにネイビースーツのおすすめの着こなしを教えていただけますか?中村さん、今日はネイビーワントーンの着こなしをされていますが。

 

中村:ビジネスマンの方でネクタイを目立たせた着こなしをされている方いらっしゃいますよね。Vゾーンが派手な方が多いんですが、それは間違いかな。私はネイビーのタイを10本くらい素材や柄違いで揃えているんです。朝、コーディネートに困った時も、ネイビーのネクタイを合わせると決まる事が多いんですね。お助けタイというんでしょうか。ネイビーの無地のネクタイをトーンの異なる3本くらい揃えておくと非常に便利なのでおすすめです。

干場:本日の中村さんのコーディネートを教えてください。

 

中村:スーツはラルディーニです。オーダーで仕立てました。

干場:カッコイイですね。

中村:このデニム風の生地は自分で用意して作ってもらいました。そうしたら、同じようなものが翌年のラルディーニのコレクションにラインナップされていたんです(笑)。ネクタイはジエレのものでコットンとシルクの混紡です。裏地が付いていないので軽くてスカーフみたいなんです。シャツはジャンネットのもので、水色のセミワイドカラー。よく見るとジャカード織になっている一枚です。最近、スーツスタイルがよりクラシック回帰へと向かっている中、シャツもワイドカラーからセミワイドカラーへと少しエレガントなタイプが出てきています。

干場:靴はどちらのものですか?

 

中村:エンツォ ボナフェで、ネイビーの靴です。

干場:今日は全身ネイビーなんですね。

中村:この靴はネイビーなんですが、あえて黒のクリームを塗っているんです。そうすることによって深みのある色合いになるんですね。しわの所は黒く見えたり、微妙な色合いが楽しめます。

干場:唸ってしまうような、さすがのテクニックです。

中村:私は黒い靴にはネイビーのクリームを塗るんです。塗り重ねていくと光が出て、少し青みを感じさせるんです。表情のある足元になります。

干場:いろいろな技をお持ちですね。他にビジネスマンにおすすめの技はありますか?

中村:ネクタイは先ほど話したネイビー以外にダークブラウンを揃えておくと便利ですよね。合わせやすい。

干場:中村さんは長らくモデリストでもあるわけですが、スーツを作る際、少しづつ進化させているんですか?

 

中村:私がビームスに入社して一番最初に3ツ釦が流行った頃は、今のように段返りでなく上2ツが掛けられるようなデザインが多かったんですね。徐々にイタリアのクラシックスタイルが流行ってくると、柔らかい雰囲気を出すために、ふんわりとした段返りを取り入れてきました。構築的なシルエットが多かったので、パッドがしっかり入ったスクエアなショルダーというのが多かったのですが、それがなで肩になってきて、ゆるかったシルエットもスリムフィットになってきました。当初はドロップ7くらいが主流でしたが、8くらいになって、物によっては9というものもあります。パンツもプリーツが入っていたのがノープリーツになっていき、細くなっていき、最近は再びゆとりのあるシルエットになってきてプリーツが復活してきていますね。今は細身のワンプリーツが主流ですが、ピッティで見ると太目のパンツを穿いている方も出てきていますね。クラシックな服も時代によって多少、半歩づつくらい進化していって、気づくと一歩進んでいる、という感じですよね。3~5年のタームで振り返ると、やっと一歩前進してディテールやシルエットが変化している、という流れのように思います。

干場:中村さんは流行というものを、どのようにとらえていらっしゃいますか? 

 

中村:先ほども言いましたが、トレンドって半歩でいいんですよね。大人はゆっくり取り入れればいいと思っています。例えば、プリーツ入りのパンツは3年前くらいからピッティでは出ていたんですが、それを今すぐ取り入れるべきなのか、少しづつ取り入れるべきなのかを、大人は考えて取り入れて欲しい。これが流行っているから、すぐこれを買わなくてはいけない、という考え方はしないことですね。次のスーツを買うとき、こういうのも取り入れてみようかな、というようなスタンスで取り入れていけばいいんです。いきなりワードローブをがらりと変える必要はない。お直しをしながら着る、という手もありますよね。今日着ているこのスーツも3年くらい前のものなのですが、裾幅を17cmにしているんですが、購入当初は18cmだったんです。それから、17.5cmに直し、さらに今、直した状態なんです。丈も当初より短くしています。

干場:少しづつアップデートしているんですね。

中村:買った当初より着丈を詰めたり、スリムなシルエットにしたり、自分なりにアップデートするのがいいですよね。なんでも無闇に買うより、あ、(ショップとしては)買ってもらったほうがいいんだけど(笑)。自分の持ち物をアレンジして、新しいものは少しづつ取り入れるのがいいかな、と思います。何かを買い足す時に少しトレンドを意識してみて、ワードローブを更新していく、というのが大人の上手なトレンドとの付き合い方じゃないかな、と思います。

Photo:Mitsutoshi watanabe
Text:Yoshie Hayashima

【プロフィール】
中村達也氏
ビームスクリエイティブディレクター。
大学在学中よりBEAMSでアルバイトをし、卒業後ショップ勤務、店長、バイヤーを経て現在はクリエイティブディレクターとしてドレス部門を統括。様々な媒体で連載を持ち、そのメンズのドレスクロージングに関するセレクトや論理的な解説が人気を博している。

【問い合わせ】
ビームス
http://www.beams.co.jp/



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