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ベッキー、ファンモン加藤…etc
「不倫は本当に悪いこと?」
〜恋愛・ビジネス相談所〜

2016.3.27
2016.3.27

周囲の状況によっては、不倫は悪とも限らない。

カント、デカルト、ニーチェにソクラテス...。歴史上の哲学者たちは、あまりに偉大ですが、いまその肉声を聞くことはできません。

でも安心してください。分厚い哲学本に閉じ込められた賢人の知恵を、わかりやすく教えてくれる哲学者が、この極東の日本に存在します。その名も、小川仁志先生。

人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。小川先生は京大卒業後のバブル華やかなりし頃、「伊藤忠商事」に入社するも退職し、その後4年ものフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後哲学者となった異色の経歴の持ち主です。

そんな人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。さて、第7回目の相談者のお悩みを紹介しましょう。

Q.結婚している人を好きになってしまいました

25歳の会社員です。つい最近、45歳の上司に言い寄られ、既婚者だとは知りつつ体の関係を持ってしまいました。彼はとても頼り甲斐のある人で、仕事で私がミスをした時も守ってくれ、すごく尊敬している人なので、断ることができませんでした。彼は奥さんはいるものの子供はおらず、また奥さんとうまくいっていないと言っているので、軽い気持ちで体の関係を持ったのですが...気づけば好きになってしまっている私がいました。

彼は「25歳なんだから、まだ若いんだし大丈夫だよ」と不倫をすすめてきます。私も、まだ結婚願望はないし、大好きな彼といられるなら不倫をしても良いかなとも思うのですが、まわりの友達には「25歳という一番良い時期を不倫に費やすなんてもったいない」「奥さんの気持ちを考えなさい」など、厳しく意見されます。私はどうすればいいんでしょうか?

A.「不倫はとにかく悪」、それって思考停止じゃない?

今回は不倫の悩みですね。芸能界でも頻繁に話題になります。そして非難されるのです。不倫は悪だと。でも、そんなに単純な話なのでしょうか? もし不倫が悪なら、どうして犯罪にしないのでしょうか? たしかに実際に裁判になるケースはありますが、それは誰かの心を傷つけているからでしょう。ということは、そうではない場合は許されるのでは?

不倫はとにかく悪だというのは、私にいわせるとただの思考停止です。ここで少しじっくりと考えてみましょう。まず不倫の定義ですが、どちらか一方に配偶者がいるにもかかわらず愛し合う関係に陥ることといっていいでしょう。そういうとすぐに肉体関係をイメージするかもしれませんが、それは必須の条件ではありません。逆にそんなのがなくても、心から愛していたら十分不倫でしょう。もちろん肉体関係だけ持つ場合も不倫になり得ますが。この場合は体だけ愛しているのです。


その意味での不倫が悪だということは、つまり正しくないということです。では、この場合の正しくないとは、いったい何に反することを意味するのか? それは正しさとは何かを問うことにつながってきます。この問題を考えるのにピッタリなのが、ドイツの哲学者イマヌエル・カントです。カントは、正しい行いは無条件にしなければならないといいます。そしてごく簡単にいうと、正しい行いとは、常にみんなが納得する内容であるべきだというのです。これは「定言命法」と呼ばれる倫理の基準です。

ただそうすると、みんなが正しいと思えばリンチだって正しいということになってしまいます。そこでカントは、人間は何かの「手段」ではなく、「目的」でなければならないと付け加えるのです。言い換えると、人間の尊厳だけは絶対に傷つけてはいけないということです。いわばこれが正しさの絶対的な基準になるわけです。

さて、このカントの倫理の基準を不倫に当てはめたいのですが、その際さらに詳しく場合わけしていく必要があります。なぜなら、愛するという行為が人間の尊厳を傷つけるかどうかは、関係する人たちそれぞれの状況をつぶさに検討していかなければわからないからです。これが不倫の難しいところです。暴力行為ならもっと単純なのでしょうが、そうはいきません。

最初の関係者は、不倫の相手です。これについては、自分がどのような感情で相手と付き合っているにせよ、それを相手が了解したうえでやっているのなら問題ないでしょう。そうでない場合は、相手の尊厳を損ないます。たとえば、相手をだましているとか。その場合は、正しい行為ではなくなってしまうのです。相談者さんの場合、相手の方が同意されていますので、ここは問題なさそうですね。

次に、相手の配偶者や家族に対する関係です。相手の家族が同意していない限り、彼らの尊厳を損なってしまいます。逆にいうと、相手の家族も了解していれば問題ないのです。相談者さんの場合、相手の方に奥さんがおられるようですので、その人の気持ち次第ですね。これについては最後の結論のところでお話しします。

自分自身の家族に対してはどうか? これは家族が知って嫌だと思うなら、彼らの尊厳を損なうでしょう。相談者さんは独身なので大丈夫かと思いますが。もちろん両親や兄弟姉妹、親戚も関係してきますが、そこは成人されているので、あまり気にしなくていいと思います。カントだって独立した個人をベースに考えますから。そこまで考えだしたらきりがありません。さらに忘れてならないのは、自分自身に対する関係です。つまり、自分が不倫でもいいと思うなら問題ないでしょうが、後ろめたいと感じているなら正しくありません。悪いと思うことをしているのですから、カントの定言命法に反するわけです。相談者さんは悩まれているので、ここが微妙ですね。

最後に、社会に対する関係が考えられます。一夫一婦制が法定されている以上、それを前提とすると、家族制度の基礎を揺るがしかねないからです。逆にいうと、制度そのものを揺るがすまでに至らなければ、大丈夫だといえます。でも、これは個人の悩みではなく、社会全体で考えることだと思います。もし不倫が家族制度を揺るがしかねないなら、法律で禁止する必要があるでしょう。

そして、その場合には不倫が横行する社会背景をしっかりと調査する必要があります。そこには何か理由があるはずです。その結果、価値観の多様化によって、もしかしたら一夫一婦制自体がおかしいという話になることだって考えられます。これは冗談ではありません。アメリカでは同性婚が当たり前になり、今度は一夫多妻制の是非が真剣に議論され始めています。ちなみに、カントは一夫一婦制でないとだめといっています。結婚すると相手の性器を独占する権利が生じるからだとか...。ここははたして人間の尊厳のためといえるのかどうか議論があるところだと思いますが。

以上のように、不倫だからとにかく何がなんでも悪だとはいえないのです。相談者さんのケースでは、周囲のご家族のことがよくわかりませんが、少なくともここに登場する相手の奥さんの気持ち次第でしょう。でもそれは、きっと怒るだろうななどという単純な想像ではだめで、もう少し情報を得てきちんと把握する必要があります。関係がうまくいっていない夫婦の場合、かえって不倫をしてくれているぐらいが気楽だというケースもあるからです。

実際、中年夫婦の場合、そういう話はよく聞きます。とにかく、まずは漠然と悩むのではなく、関係者の図を書いてみることです。そうして自分たちの不倫にかかわってくる人たち一人ひとりの気持ちを推し量ることで、おのずと答えは見えてくるはずです。

Text:Hitoshi Ogawa
Photo:雪ボタン、Getty images

【小川仁志】
1970年京都市出身、京都大学法学部卒。伊藤忠商事に入社するも退職し、4年間のフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後名古屋市立大学大学院博士後期課程を修了し、博士号取得。2015年には山口大学国際総合科学部准教授となる。専門は公共哲学、および政治哲学。商店街で哲学カフェを主宰するなど、市民のための哲学を実践している。哲学に関する著書多数。 

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