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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION

NEXT40 注目のオトコたち VOL.02
ビームス 土井地博氏に訊く、今とこれから。[前編]

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0を1にしていくことを、 自分たちの世代でも生み出していけるように

90年代後半から隆盛を極めてきたセレクトショップ、そのプレスというポジションにつき、シーンを盛り上げてきた方々が40代を迎えようとしています。ファッションの最前線に立ち続けてきた、気になる注目のオトコたちが40代を迎えるにあたって考えていること、会社内での取り組みやプライベート事情までを、彼らと同世代でありファッションの編集者という立場で見続けてきたFORZA STYLEのシニアエディター谷中がヅケヅケと訊いていく連載企画。

2人目は、セレクトショップの雄「BEAMS」の社長室 宣伝広報統括本部 部長 コミュニケーションディレクターとして活躍する、土井地博氏にインタビューを敢行しました。

会社の一番の営業マンに

谷中:さて、まずはビームスでのポジションを教えてください。

土井地博(以下土井地/敬称略):宣伝販促、正式名称でいうと宣伝広報の統括をしている部門の責任者です。会社の中には、店舗運営をする部門、商品系といったバイヤーやオリジナルの商品作りなど物を作る部門があります。さらに、コトを起こす販促として、ホームページやカタログを作ったり、ショップでイベントを実施するなど、販売促進チームと連動して、方向性や予算管理を行う宣伝部があり、そこの統括責任者となります。

谷中:だいぶ重要なポジションに就かれているんですね。

土井地:もともとPRをやっていたのと、かつては兼任で会社の総合企画をやっていて、今に至った感じですね。

谷中:そのポジションに就かれて、何年目になりますか?

土井地:5年くらいですかね。

谷中:実務的には、どういった業務が多いんですか?

土井地:ビームスの宣伝と販促に関わることほぼすべてなので、複合的には全部が関わってきます。肩書きにコミュニケーションディレクターとありまして、社内・社外のコミュニケーションを図っているため、社長からは「会社の一番の営業マン」と、よく言われています。働くスタッフの代表として「ビームスっていうのは、こういう会社です」「こんな人材が揃っています」というようなことを伝えていく役回りですかね。

谷中:チームとしては何人編成くらいになるんですか?

土井地:5人ほどで、その下にプレスやWEBチームなどが大所帯でいまして、社長が「あれをやろう、これをやろう」と思ったことをビームスというフィルターを通して、世に出していく。それらを引き受けています。以前リリースさせて頂いた『BEAMS AT HOME』などが良い例ですが、数年前から指針として掲げている「ビームスにはこういう人材がいるから、世に知ってもらいたい」というのがきっかけになっていて、今まではどうしてもメディアにはディレクターやバイヤー、プレスなどを取り上げて頂く機会が多かった中で、違う形でコミュニティ感というか、働いているスタッフにスポットを当てたものを形にしたりしています。

谷中:国内に限らず、海外のショップスタッフさんも登場なさってますもんね。

土井地:ただの「インテリア本」ではないし、その人を象徴する一枚絵をメインにしていて、その人がどんな空間で過ごしているかという紹介に過ぎない表現なので、クレジットを掲載して店舗誘引的なこともしていないんです。あくまでも人、ただここから伝わってくるものって、「ビームスって楽しそうな会社だな」とか「素敵な集団だな」って、お客様にいろいろなポジティブな空気を感じてもらうとともに、社内では競争力を持って貰えるような本になっているんです。

谷中:「こんな風になりたい」っていう指標を思い描かせるツールとしての役割ですね。洒落てるし、だいぶ贅沢ですね。

土井地:お陰様でファッション業界における就職したいランキングや転職したいランキングで、ずっと上位をキープさせて頂いています。

谷中:規模の大きさはもちろんあるとはいえ、それは凄いですね。

土井地:なかなか良い人材が集まりにくいと言われる中で、セミナーを見に来たり、「働きたい」と思ってくださることが多いので、とてもありがたいことです。会社のブランディング、ビームスのブランディングをする中で、カジュアルさと大人さと、色気と艶、カルチャーなどといったイメージをコントロールして、外に出す部分の役割を担っていて、こんな時代ですからアナログとデジタルを融合させながら、ビームスというものを表現しています。

谷中:ちなみに、いまビームス全体でスタッフは何人くらいいらっしゃるんですか?

土井地:グループ全体だと約1,800人ですね。

谷中:今の採用形態は、新卒と中途がメインかと思いますが、かつてのようにアルバイトからの叩き上げで活躍するなんてのも残っているんですか?

土井地:ありますが、アルバイトで何年働いたから社員になれるという制度はまったくなくて、中途採用試験を受けて社員になる形です。

谷中:昔は服が好きでアルバイトから実績を積んで社員になるといった気概のある方が多かったように思いますが、新卒の方にも勢いのある方は多いんですか?

土井地:多いですよ。これポジティブに言いますが、昔と違って働き場所としてはただの洋服屋さんではなくなってきてますよね。昔は10:0じゃないですが、古着にやたら詳しいとか何かに飛び抜けた才能があれば、個性としてそれが良くて採用することも多少はあったかと思いますが、今は色々な意味で柔軟さや社会性を求めています。一見すると面白くないような感じがしがちですが、そういったベースを備えた人たちに洋服の知識とかカルチャー的な側面を伝えたり、一緒に勉強することで厚みを増して貰っています。

谷中:可能性を引き出していくわけですね。さて、では40歳が間近になった土井地さんが感じることについてお聞きしたいんですが、まず何か変わってきていますか?

土井地:めちゃくちゃ変わってきていますね。39歳にもなると、今まで積み上げた経験値や体験によってある程度上手くこなせるようにはなってきているし、若い時みたいに「石橋を渡ってから叩く」ような勢いはなくなりがちですよね。だから、若い人たちと同じ目線でひとつの物事を色々な角度から見るように意識して話し合ったり、一方で先輩とたくさん話をするような機会が増えていると思います。それと、1を2にしたり、2を3にしたりする努力は、今までしてきたんですが、新たに0を1にするという、同じ1でも新たに生み出す何かを少しでも見つける。そういったものを、みんなで作り上げていくっていうことをよく考えています。

谷中:その1には大きな違いがありますもんね。

土井地:ビームスは日本で極めて早い時期からリーバイス®やナイキを紹介しましたという結果と歴史が残っていますが、今や当たり前のようにみんなが持っているという時代。挙げるときりがないですが、DCブーム時代に名だたるブランドを買い付けていたり、今⚪︎⚪︎ジャパンって会社名がついているファッションブランドの多くを初めて日本で紹介したり、ナイキのエアマックスやレッドウィングを仕掛けたりしたのもビームスだったという中で、後に見たらみんなが普通に取り入れている物事のオリジナルを作った第1歩というのがビームスには多いんです。そういう0を1にしていくことを、個人というよりは、自分たちの世代でも生み出していけるようにしようと意識し始めたのが30歳後半からですかね。

谷中:そう思い始めたきっかけってありますか?

土井地:仕事で海外に行かせて貰う機会が多く、お店を回ったり、街を見回して「いいな」と思うものに日本製のものが多かったりしているんです。自分は島根県出身なんですが、小さい時から普通に使っていた陶器がビームスで取り扱われていて世界にも紹介されていたりするんです。シャッター商店街と言われるところで埃をかぶってしまって数百円で売られているものを取りすがりの方が欲しくなるかは分かりませんが、ただ洋服と一緒に並べるなど環境を変えて、伝達手段を作ることで、同じものがまったく違って良く見えることってありますよね。日本で生まれ育ってきたので、外への憧れはありながらも、日本の脈々と受け継がれていたり、日本人のデザインも含めて、あらためて見直すと、これから0を1を生み出していけるのはMADE IN JAPANとか日本らしさというところにあるんじゃないかって思ったんです。

谷中:いろいろな所に目を向けていきはじめたわけですね。ビームスも2016年に40周年を迎え、ご自身とほぼ同じ年ですが、これから会社として土井地博としての目標はなんですか?

土井地:現状、若い人がどんどん少なくなっていき、昔に比べて洋服ってコレクターアイテムに近い存在になってきていると思うんです。そんな中でビームスも今までのビジネスだけではなく、メディアに登場する際に使われていた「セレクトショップ」という概念を払拭して、改めて「ライフスタイル提案をするお店」として、10万円オーバーのものと数百円のものに同じ価値観を共有させながらお客様に伝えていくことを実践させていきたいと思っています。

谷中:大きなシフト転換ですね。

土井地:そして、日本を見つめると同時に、現時点で進出している北京・上海・香港を代表する中国や台湾、タイだけではなく、さらにはインドネシアやマレーシア、ベトナムといったASEANの中でもファッションがまだそこまで開花していないがさらに経済的に発展して、今後若い層が色々なことに興味を持ち始めるであろう東アジアや東南アジアの国々にビームスを知っていただきたいと考えています

次回は、土井地氏の今後の展望などを訊いていきます!

Text:Ryutaro Yanaka
Photo:Yozo Yoshino

土井地 博
ビームス 社長室 宣伝広報統括本部 コミュニケーションディレクター

大阪のショップスタッフを経て、プレス担当として上京。その後は、PRと宣伝広報の統括ディレクターとして、マーケティング戦略の立案や販促のプランニングを行う辣腕。



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