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異色対談 高橋龍太郎×清川あさみ「アートと人間と男と女」

2016.3.17
2016.3.17

アートコレクターとアーティストが語る「男と女の本音」

FORZAの人気連載「一匹狼宣言」の筆者であり、精神科医の高橋龍太郎氏。今回、そんな高橋氏とのアート対談を熱望したのは、来る4月に新作個展の「ITOTOITO(イトトイト)」を開催するアーティスト・清川あさみ氏だ。

清川氏は美女の写真に刺繍を施す「美女採集」というジャンルでブレイクしたアーティストだが、今回の個展では「社会全体を洞察し、アート化する」という新しい視点を披露する。

コレクターとしても著名な高橋氏との対談は、人間の本質にまで分け入った。

高橋龍太郎(以下高橋):4月に個展を開くんだって? おめでとう!

清川あさみ(以下清川):「ITOTOITO」というテーマで表参道のGYREでやります。今年で作品を作り始めて15年なんです。

高橋:その15年が一気に回顧できるんだね。個展のステイトメントを読んだけれど、「Instagramの写真を反転」とは、どういうことでしょう。

清川:Instagramって今若い世代に大流行しているSNSがあるんですが、自分のInstagramに投稿した写真をいじって作品を作ろうと思ったんです。作品をよく見ていただくと、糸がレイヤーになっていてInstagramの写真の上に閉じ込められているのがわかると思います。一見デジタルに見えるんだけど、すごくアナログな手法なんです。

高橋:面白い手法だね。

清川:平面でもデジタルでも、アナログでもない世界を作りたくて。自分はずっと糸と向き合ってきたし、糸を使って1つの日常とか風景をレイヤー化して、複雑に見える世界を作りたくなったんです。

©︎asamikiyokawa
photo/mikiya takimoto
サイズ:30×30cm 素材:糸、写真、アクリル

 

高橋:面白い手法だね。いきなり頂点に浮上してきた感じだな。

清川:そう言っていただけると嬉しいです。

高橋:コンセプトも凄けりゃ、作品も凄そうだ。楽しみ、楽しみ。是非行きますよ。

編集部makiko(以下makiko):社会の表側と裏側のコントラストみたいな感じですよね。

清川:本当にその通りです。1対1の比率を守りつつ、とにかくレイヤーが複雑に見える方法を考えました。片方のイメージは写真紙に、もう片方は縦糸だけを連ねた面に転写します。

©︎asamikiyokawa
photo/mikiya takimoto
サイズ:30×30cm 素材:糸、写真、アクリル

それをアクリルの職人さんに閉じ込めてもらい、二つのレイヤーを少し離して重ね合わせるんです。見る角度によってネガティヴとポジティヴのイメージが競い合い、観る人の心理状態によって、複層的に表現されます。だから両方の絵が見える3Dのような作品になるんです。作るのが大変で、目下作業中です。

「わたしたちのおはなし」©︎asamikiyokawa
素材:書籍、糸

高橋:でも間に合うんでしょ?

清川:何とか間に合わせます。

高橋:SNSを使って、世界が10倍くらいに増幅してる感じ。それがいかにも現代アートって感じだよね、

清川:私の場合、表現欲求の根底には、何かに対する疑問や、綻びや穴ぼこみたいなものがあるんです。それを紡ぐように作っているのが自分の作品。ここ最近の「なんで?なんで?」を全部かき集めたら、こういう作品群が生まれました。

©︎asamikiyokawa

高橋:個人のコンプレックス、裏側から、一気に時代の裏側まで貫いていったんだね。

makiko:清川さんは女性の心の内面まで感じ取られて「美女採集」をされてきたと思うんですけど、「美」と一口に言っても、女性の美にはいろいろな種類がありますよね。

清川:作品にしやすい女性には、その人の裏側に何かが隠れている人が多いかもしれない。本質的に影があったり、歴史があったり、裏があったり、欲望があったり。

高橋:一筋縄ではいかないんだ。

清川:一筋縄ではいかない人は、すごく作品にしやすい。ただ単に見た目が綺麗な人だと、アイディアが膨らんでいかないんですよ。お友達として付き合うなら、リラックスできる、明るいタイプがいいんですけどね。

高橋:プライベートでは、一筋縄で行けちゃう人のほうが付きあいやすいというわけだ。
「作品用の女性」と「癒しになる女性」を使い分けてるんだね。男性も、古典的な言い方だけど、生活を一緒に出来るような女性と、恋愛関係だけに留めておく女性とは、やっぱり使い分けるからね。レイヤーのある女性に惹かれることは間違いない。だけどそういう女性に絡め取られてると、自分の人生を失ってしまうようなリスクがある。でもあえて、そのリスクの中に入り込んで行くのがアートの本質ですから。それは文学だって同じ。普通の男女が普通の恋をして普通の子供が産まれても、文学にはなり得ないもんね。
2つも3つもレイヤーがある人に引きずり込まれて、人生を失って、初めて文学でしょ。でもそういうような深みのある人が魅力的なんだよ、きっと。

清川:そう思います。

高橋:清川さんはレイヤーが沢山ありつつ、男を雁字搦めにするような悪女では全然ないんだよ。清川さんは不思議な存在だと思う。

清川:それがコンプレックスでもあるんですが、頭の中が男性脳と女性脳、真っ二つに分かれているんだと思います。

makiko:一つのエコシステムというか。

 

 

高橋:ユングも言ってるけど、女性の中にある男性的なものとか、女性の中にある男性的なものこそが、異性を惹きつけるらしい。だから男性脳と女性脳が切り替わりつつ、女性の器でありながら、その男性的な会話が柔然にできるということが、もちろん作品を作るということにも結び付くし、色んな人とのつながりの中であなたの非常に大きな魅力になってるんだと思うよ。

makiko:先生はどうですか。沢山の患者さんに接しているから、女性と男性の間のコンプレックスだったり、美醜の問題や恋愛の問題をたくさん経験されていると思うんですが。

高橋:美醜の問題を持つ患者さんは最近は少なくなりました。10年前20年前は、100回200回顔の手術をするって人もいたんけどね。もしかすると一般的な「美女」みたいなのにあんまり憧れなくなったのかな、今の時代は。

清川:綺麗なのが普通みたいなところもありますからね。

高橋:みんなある程度化けられるってとこもあるよね。化粧品だとか、プチ整形だとか。

makiko:ハリウッドの女性たちも昔は、金髪に白い肌の青い目。でも今は個性派な人たちが人気がありますよね。アンジェリーナ・ジョリーって素晴らしく綺麗っていうよりもちょっとモンスターみたいでワイルドですよね。

高橋:最近、また痩せたしね。

makiko:正統派美人はたくさんいるのにどうしてアンジーのような個性派が人気なのでしょう。

高橋:さっき言ったプラスαがないと、ハリウッドでも生きていけないというか、美女として評価されないようになってるから、そういう事の面白さにほかの人も気づいてるのかな。
恋愛小説でいうと、昔の文豪は必ず銀座のホステスさんとか美貌で生きている人をテーマに取り上げたもんだけど、今はそんな話ほとんど誰も書かなくなったでしょ。

「美」だけで男を操る悪女みたいな、そういうのは無くなったし、僕なんか昔こそ美女に惹かれていたけれど、最近はキレイな方をお見かけしても「あ~、美女ねっ」ていう感じ。

100%美女じゃなくても70~80%くらいの美女で、いざっていう時にお化粧すると、100%に近づくくらいの美女になれるような、ほんと70%くらいの人でかつ、プラスαのなにかがある女性にすごく魅力を感じるよね。今の時代の男性も、みんなそういう女性を求めてるんじゃないのかな。

清川:それすごく面白い指摘です。確かに先生みたいな目利きの男性たちは絶対に美女だけじゃダメっていいますもんね。「可愛いだけじゃダメ、なんかもう一つ」って。

高橋:だから逆に言うと大変なのよ、美女は。

清川:そう、大変だと思う。

高橋:水準が高いから、美貌のレベルに合わせた教養とかを身につけなければ、逆に面白みに欠けてしまう。非の打ち所のない美人なのに、教養が全然なかったり、面白い人生経験の一つでも語れないと、男としては「キレイなだけの人」としか感じなくなっちゃうんだ。

makiko:中身も外見も充実した美女レベルが上がって、一方男性のレベルはどうなんでしょうか。

高橋:男性は本当に不甲斐ない。昔の男はよく本を読んだり、いろんな事に興味を持ったり、エネルギッシュに方々を動き回っていたけど、いまの男性はネットサーフィンで満足してしまっているというか。その点では女性は芝居に行ったり、映画に行ったり、いろんな知識欲を満たすために、全部個人の努力でやっていて、人生を面白くしようとしている。

makiko:なるほど、確かにそうかも知れません。

高橋:makikoさんは三島のフリークだけど、今どき三島由紀夫なんて読む人だれもいないだろうし。日本の文学というのは、ほとんどが1970年代くらいに完成されているから、あとはほんとに切り貼りして作ってるだけで。新しく生まれたのは村上春樹ぐらいで、全く違う物を作ったという域ではね。又吉さんが賞を獲ったのは、太宰治とかを好きだったからなんですよ。稀有な例です。ああいう風にして古い文学に触れていれば、新しいものも書けるし。そういうことが基本的にスッポリ抜けてるんだと思う。

makiko:すべてネットで見ていたら審美眼も育まれないでしょうね。

高橋:男性から見る女性への審美眼が育まれないうえに、せっかく積み上げてきた女性の努力を評価するのが中年以降のオッサンだけでは、魅力的な女性は年寄りばっかりが釣り上げるみたいな構造がずっと続いちゃうんじゃないの、今のままいったらね。ましてやお年寄りはおカネもあるわけだし、余裕もあるし…という悲劇的な話をしてもしょうがないかな(笑)。でも特に若い男性はある時期、ブランドをすごく意識して勉強するのもアリだと思うよ。バブルの頃はみんなブランド志向だったでしょう。10代~20代のときにすごくこだわってブランド遊びで修行すると、ブランドってただモノではないから、若い男性の足りない頭でもやっぱり精神性が磨かれるってことはあるよね。ブランドに対する考え方の差。男女の精神的な成熟度だったり、格差を生んでるんじゃないかなと思う。

makiko:これを着ればハズさないだろうとか、目立たないだろう、浮かないだろうという安心感で洋服を選んでいる男性は増えてきたように思います。

清川:男女ともあまり熱いこと言ってると、「あの人って痛いよね」という目線で見られてしまう。でもそこに本質が潜んでいたりするんですが。

makiko:これからどうなっていくんですかね、男女は。

清川:好きな人とかいますか。

makiko:えっ、は、はい(照)。

清川:どういう人が好きですか。今の世代の人ってどういう人が好きなのかなって、どこで選んでるんだろうと聞こうと思って。

makiko:肉食系ですね。年齢とか関係なく、すべて自分で切り拓いていく。血の滴る肉にそのままかぶりつくような、生命力のある人が好きです。外見はワイルドだけれど、頭の中はクラシックが鳴っているような、知的な肉食系が好きですね。

清川:山本さんはちょっと特殊でしたね(笑)。

高橋:韓流で一時期大騒ぎしたじゃない。日本では今ちょっと下火になっちゃったけど、今もまだアジアと南米なんかは韓国のシンガーや俳優が大人気なんだよ。それは圧倒的な存在感だね、その肉的な強い男、そこに跪くとまでは言わないけど強い男に見合う美女みたいな古典的な物語のアジア版みたいなものに、ものすごく世界中の若者が憧れてる。

そういう存在は日本の芸能界は全然ないんだよね。逆に世界で通用する男優も女優もいないし。韓国や中国なんて世界に進出しているスターは山のようにいるのに。民族にそんなに差があるとは思えないけど、やっぱり存在感の薄さというのは時代精神みたいなものに、すごく反映してる感じはするね。だからそういう薄味が今妙に好きになってしまっているけど、それは世界からすると取り残されている何か。

薄められた楽園の物語のような感じだよ。この前たまたまイチゴ栽培の番組を観ていたら、イチゴも最初のうちはよく育つように水をふんだんにあげるんだけど、採集する2か月前くらいからどんどん水を絞って、最終的に水の量を3分の1くらいに減らすんだって。そうするとイチゴが甘く大きくなる。いい子孫を残さないと自分の代で絶えると思うから。

それはワインも同じで雨量が少なくて、熱い気候の年はいいワインができるんです。日本の男性はストレスに晒されていないから、、男性「性」がどんどんどんどん稀薄になっているのかもしれない。

makiko:日本は、頑張らなくても死にはしない社会ですもんね。

高橋:男性は千尋の谷底に突き落とさないと、立派に育たないのでしょう。

清川:メッセージですね。

高橋:まぁそういう意味で言うと、理念的な兵役はあった方が良いよ。苦役っていうと変だけどその1年国土保全隊でも武道でもいいよ。肉体の奉仕だけをひたすらやって、例えば堤防作ったり、山林を綺麗にしたりとかそういう事でもいいから1年間くらい何も考えないで、肉体を酷使するようなことをやらないと。そういう危険に出会うと男性性が甦る。日本男子の男性性の復活は、そのあたりにヒントがあるのかも知れない。

makiko:ジムでプロテイン飲んでるのと全然違いますね。

高橋:違うだろうね、あれは無駄な筋肉だ(一同笑)。

<清川あさみ15周年新作個展「ITOTOITO」>
会期:2016年4月2日(土) - 2016年5月25日(水) 11時-20時
会場:EYE OF GYRE/GYRE 3F  
住所: 東京都渋谷区神宮前5-10-1  
電話: 03-3498-6990
共催:GYRE/ASAMI  
協賛:富士アクリル工業 
協力:株式会社 細尾/ippudo Inc./HiRAO INC

清川あさみ
淡路島生まれ。2001年初個展。2003年より写真に刺繍を施す手法を用いた作品制作を開始。庭園美術館、水戸芸術館での単独個展など展覧会多数。
代表作に美女採集、高橋コレクションに所蔵されている「Complex」シリーズがある。「銀河鉄道の夜」「狼王ロボ」などの絵本や「caico」「ひみつ」などの作品集など著書も多数あり、作家谷川俊太郎氏との共作絵本「かみさまはいるいない?」が2年に1度の児童書の世界大会の日本代表作品に選ばれる。VOCA展入賞。各方面にて活躍の場を広げている。

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