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「子供を産みたくないのは社会のせい!」
ソクラテスならこう言うね
〜恋愛・ビジネス相談所〜

2016.3.11
2016.3.11

子供を産みたいと思うのは欲張りなんかじゃない!

カント、デカルト、ニーチェにソクラテス...。歴史上の哲学者たちは、あまりに偉大ですが、いまその肉声を聞くことはできません。

でも安心してください。分厚い哲学本に閉じ込められた賢人の知恵を、わかりやすく教えてくれる哲学者が、この極東の日本に存在します。その名も、小川仁志先生。

人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。小川先生は京大卒業後のバブル華やかなりし頃、「伊藤忠商事」に入社するも退職し、その後4年ものフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後哲学者となった異色の経歴の持ち主です。

そんな人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。さて、第6回目の相談者のお悩みを紹介しましょう。

Q.私、子供を産む気になれないんです...。

こんにちは。27歳のOLです。今付き合って3年目になる彼氏がいて、結婚の話もでています。彼は35歳で、早く子供が欲しいようなのです。

彼のことは大好きですし、結婚もしたいのですが...。正直、子供を産むことに抵抗があります。だって、子供を産んでも満足な生活ができるか分からないじゃないですか。

先日、「子供が保育園に落ちて、社会や政治に対する不満を綴った匿名ブログ」が話題になっていましたよね。言葉使いはどうかとは思うものの、正直共感してしまうところがありました。子供を産んでも保育園にも入れられないかもしれない、仕事復帰もできないかもしれない...など、社会のバックアップがあまりに手薄で不安がいっぱいです。日々生活するだけでも大変なことも多く、悩みもつきないのに、子供を産むことでさらに悩みが増えるのかと思うと躊躇してしまう自分がいます。どうすればいいでしょうか。

A.自分が悩むのではなく、社会を悩ませよう!

今回は、結婚して子供を産むかどうかという深刻な悩みですね。これは女性だけでなく、男性も抱える悩みの一つです。特に今のような若い人に対する支援が手薄な世の中では、当然子供を産むのも躊躇せざるを得ません。結婚して子供を育てる幸福な生活に憧れても、現実には厳しい経済状況との戦いの日々が待っているのです。

しかし、よく考えてみると、誰もがそんな悩みを抱えなければならない世の中のほうがおかしいと思いませんか? 結婚して子供を産み、育てる。これは当たり前のことです。欲張っているわけでもなんでもないはずです。その意味で、この問題は個人で解決することではなく、社会が解決することだと思うのです。

たしかに子供を産むのは自分の責任です。そしてその子を育てるのも親としての自分の責任でしょう。でも、決してそれだけではないはずです。今回は、日本の哲学者和辻哲郎の思想を参照しましょう。彼は子供を産むことについてこんなことをいっています。かくのごとく二者の合一が二者の一体化を意味せずして二者と相並ぶ第三者となること、すなわち二一が三を生ずること、これが「生む」という現象である。(『倫理学』)

つまり、子を産むということは、親が自分の一部ではない独立した第三者をこの世に生み出すことを意味するわけです。そしてそれを認めている社会は、その新たな独立した人格に対して、当然責任を取らなければいけません。もはやそれは親の所有物ではないのですから。

社会が子を産むことを認めているのは、社会にとって必要だからです。将来の社会の担い手として。にもかかわらず、一人前になるまでは知らんぷりというのでは、あまりに無責任です。子供が親の所有物でない以上、社会は子供を育てることについてもっと責任を持たなければなりません。医療費や教育費などの費用の面だけでなく、育児のサポートや働く親の心身のサポートも含めて。和辻にいわせると、そもそも人間とは、イコール社会なのです。和辻はこんなふうにいっています。

人は世間において人であり、世間の全体性を人において現わすがゆえに、また人間と呼ばれるのである。(『人間の学としての倫理学』)

人間とは世間、つまり社会を意味する言葉だということです。言い換えると、人間の存在は社会を前提にしているということです。だから私たちは、もっと一人ひとりの人間を社会の一員としてとらえるようにしないといけないのです。にもかかわらず、現状はどうかというと、まるで子供を産むのは若い人の勝手といわんばかりです。それで支援が手薄になるため、若い人は子供を産むのを躊躇し、個人の悩みとして抱え込んでしまいます。

とはいえ、愚痴ってばかりいても仕方ないので、堂々と人の助けを借りればいいと思います。家族だって親族だって、友人だっていいのです。そして何より地域や職場の助けをどんどん借りるべきです。もちろん、周囲の人たちは、若い人が子供を産み育てるのを積極的にサポートしなければなりません。それは人間同士で成り立つ社会の一員としての義務だといってもいいでしょう。和辻はそんな人間同士の関係について、間柄という概念を使って説明しています。

一つは間柄が個々の人々の「間」「仲」において形成せられるということである。この方面からは、間柄に先立ってそれを形成する個々の成員がなくてはならぬ。他は間柄を作る個々の成員が間柄自身からその成員として限定せられるということである。この方面から見れば、個々の成員に先立ってそれを規定する間柄がなくてはならない。(『倫理学』)

私たちは人と人の間で生きているのです。それは人間が、個としての存在であると同時に、関係性という全体の中の一部であることをも意味しています。これが間柄的存在の意味するところです。だから関係しあうのが当然であり、自然な姿なのです。昔と違って日本の家族は核家族化し、地縁共同体はなくなって、隣の人の顔もわからない状態になってしまっています。第二の家族であったはずの会社も、リストラが当たり前になってしまいました。

そんな中で若い人たちが苦しむのはよくわかりますが、自分の将来を考えるだけで精一杯などと自分を責めてはいけません。責めるべきは社会です。社会が変わるまで待っていては、チャンスを逃すかもしれません。だから悩まず子供を産み、社会に要求を突きつけましょう。みんなで社会のほうこそを悩ませるのです。夏には参議院選挙があります。衆議院の総選挙も間もなくあるでしょう。今こそ若い人、働く世代が声を上げる時です!

Text:Hitoshi Ogawa
Photo:雪ボタン、Getty images

【小川仁志】
1970年京都市出身、京都大学法学部卒。伊藤忠商事に入社するも退職し、4年間のフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後名古屋市立大学大学院博士後期課程を修了し、博士号取得。2015年には山口大学国際総合科学部准教授となる。専門は公共哲学、および政治哲学。商店街で哲学カフェを主宰するなど、市民のための哲学を実践している。哲学に関する著書多数。 

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