トータルのバランス優れた傑作クロノ
そろそろ自分らしい腕時計との出会いを真剣に考えている40男の皆様に、『FORZA STYLE(フォルツァスタイル)』がオススメしたい選択肢のひとつが“ヴィンテージウォッチ”です。
その世界は奥深く、手頃な価格で買えるコスパ重視の時計もあれば、果てはオークションで競り落とされる数千万円台の投機の対象となるプレミアムな個体が数多く存在します。実際問題、ヴィンテージって聞くと妙に敷居が高く感じられたり、あまりの人気から偽物が出まわっているグレーな世界であることは否めません。それもあって、どうも二の足を踏んでしまっている方が大勢いるかと思います。
そこでこの連載では、ウンチクに寄り過ぎず、今どきのファッションにもしっかりとハマる腕時計であることを前提にしながら、絶対にはずさない名機の購入ガイダンスを中心に、さまざまな角度からヴィンテージウォッチの魅力について触れていきます。
クロノグラフは腕時計の愛好家ならば避けて通ることができないジャンルです。突き詰めていくと大変なマニアックな世界が広がっていて、指名買いならぬムーブメント買いなんてのもあります。端から見れば「なんのこっちゃ?」と理解しがたい部分があるかもしれませんね(笑)。
でも、ロレックスの「コスモグラフ デイトナ」やオメガの「スピードマスター」のように、ウンチクでどうこうというよりも見た目からビビッとくる魅力がクロノグラフにはあるんです。
そんな名機を多数輩出したブランドとして外せないのがブライトリングです。ここのクロノグラフのデザインって、一度見たら忘れないほどの存在感がありまして。それはヴィンテージであろうと、現行のモデルであろうとも変わりはなく、いつの時代でもブレがないスタイルを貫いています。
その歴史の中で最も重要なモデルのひとつが、クロノグラフで史上初の回転計算尺をベゼルに搭載したことでも知られる、1942年に登場した「クロノマット」。傑作「ナビタイマー」の前身であり、ヴィンテージの世界でも安定した人気を誇る名機です。
ヴィンテージに該当する「クロノマット」の特徴を端的にまとめるとするなら、真っ先に注目すべき点は2レジスターを持つの文字盤。後続機として12時間積算計を加えて3レジスターになる「ナビタイマー」とのわかりやすい違いがここで、進化の過程であったことがうかがえます。
心臓部を支えていたのは、クロノグラフのムーブメントを製造することに特化していたヴィーナス社の名機Cal.175です。競合であったバルジュー社のCal.23と比較すると、骨太な印象が見受けられますが、そんなところがブライトリングのクロノグラフとハマります。
コチラの個体は「クロノマット」のファーストの後期モデル。現行モデルをご存知の方からすれば、かなり印象が異なるかと思います。
セカンドモデルと比較すると分かりやすいのですが、「クロノマット」に限らず言えることは、1940年代のクロノグラフは傑作揃いであること。特に文字盤の凝り具合は特筆すべきものがあります。この個体はコンディションのよさも相まって、文字盤の美しさが際立っています。
ヴィンテージウォッチは全体的にコンパクトなサイズ感なのですが、それはクロノグラフでも当てはまることです。大振りの時計が苦手という人にはもってこいで、中にはベビークロノと呼ばれる極小のサイズのモデルも存在します。「クロノマット」のファーストはケースサイズ37mm径で、今の時計よりもだいぶ小振りで腕元に馴染みやすいことも特徴です。
要するに「クロノマット」のファーストモデルって、あらゆる意味で美味しい一本で、じっくり探せば良質な個体と出会うことも可能です。ブライトリングのスタンダードと呼べる傑作中の傑作は、ヴィンテージクロノの入門機としてもオススメです!
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE