江梨：遊び人という訳ではなかったのですが...。やっぱり、サロンを始めたばかりの頃は本当に苦労したので、その時の自分に何ができるかを考えた時、私にできることと言えば「とにかく自分を少しでも知ってもらう」ということだけだったんです。当時は、とにかくじっとしているのが不安で。それで、毎日飲み歩いて、いろいろな人と知り合っていました。その時に出会った人が、今でもサロンに来てくださるので本当に有難いことです。でも、そんな生活をしていたので、色々嫌な噂もされました。「遊び人」とか「飲みにいって営業ばかりしている」とか。
西内：頑張っているのに、ひどいことを言う人もいるんですね。そんな風に嫌な噂をされるって、すごく悲しくないですか？
江梨：もちろん悲しかったですしストレスもありましたけど、それ以上に「やるしかない」という気持ちの方が強かったですね。食べていくためには、そんなことでストレスなんて言っていられません。それくらいの気迫がありましたね。
西内：「本気になる」とはこういうことなのですね。嫌な噂をされたら、私はすぐに悲しくなってストレスに耐えられなくて引きこもっていました。きっと、まだまだ本気度が足りなかったということですね。勉強になります。
江梨：そういう死に物狂いの時期があったからこそ、今こうしてたくさんのお客様に来ていただけているのだと思うと本当に良かったと思います。
西内：そんなハングリー精神旺盛の江梨さんですから、もっともっと事業を拡大して店舗を増やそうという野望はないんですか？
江梨：確かに、この小さなスペースだとどれだけ頑張ってもできる範囲は限られているので、美容師さんがどんどん店舗を増やしたくなる気持ちもわかるんですよ。ただ、このサロンの魅力は「一人一人に真剣に向き合って美容をトータルプロデュースできること」だと思っているので、店舗を増やす予定は今の所ないです。
西内：確かに、アシスタントさん任せではなくて、カラーリストである江梨さんが最初から最後までカラーをしてくださるのがこのサロンの魅力ですよね。落ち着きますし、大切に扱われている感じがします！
江梨：そう言っていただけると嬉しいです。そのために、カラーリスト、スタイリストと分業制にしているというのもあるんですよね。それぞれのプロが、自分に与えられた役割に集中してお客様に向き合うことで、手を抜かない本物の「美しさ」をお客様に提供できるのではないかと思っています。お金や利益に目が眩んで初心を見失わないような施術、経営をしていきたいですね。
西内：本当に、経営者でありながら江梨さんは本物の「職人さん」なんですね。そもそも、江梨さんはいつからカラーリストを目指し始めたんですか？
江梨：高校生の頃ですね。大分の田舎の高校生だったのですが、美容業界を志して福岡の専門学校に2年通い、その後上京して「imaii」という老舗の美容室に就職しました。
西内：「imaii」といえば、歴史ある老舗美容室として有名ですよね。そこに就職できるだなんて、凄いことですよね。
江梨：当時は自分では分からなかったのですが、今考えるとよく入れたなと思います。入ってから凄い美容室だと気付きました。超有名な海外スターが来ていらしゃって、驚きの連続でしたね。40年と歴史のある老舗の美容室なので、学ばせていただけることも多かったです。
西内：なぜ「imaii」に就職されようと思ったんですか？
江梨：当時では珍しい「カラーリスト」というカラー専門の職種で募集していたんですよ。美容師といえばカラーもカットもするというのが一般的ですが、「imaii」では「カラーのスペシャリスト」「カットのスペシャリスト」を分けて考えていて、私は「カラーリスト」としてカラーを専門的に学びたかったので、「imaii」に応募しました。
西内：それが、江梨さんが日本一のカラーリストとなる第一歩だったという訳ですね。
江梨：日本一には一回なったことがあるってだけです（笑）。でも、「日本一」に選ばれてからは、そのプレッシャーに押しつぶされそうになったことも当時はありました。何をしていても「日本一」という記録が覆いかぶさってくるんです。自分よりベテランの美容師さんに、セミナーで講義をすることもあり、「私なんかがこんなことをして良いのだろうか」とすごく悩みました。もちろん、25歳で日本一に選ばれたので調子に乗ってしまったこともあり、いろいろと痛い目も見ましたね。
西内：江梨さん、天狗になっていたんですか？
江梨：はい。やっぱり25歳と若かったというのもあり、自分を客観視できていなかったんですね。周囲に持ち上げられるがままに調子に乗ってしまっていました。今考えるととても恥ずかしいのですが...。
西内：どのように調子に乗っていたんですか？
江梨：例えば、他のスタッフの仕事をあまり手伝わなかったり、あとは「私は才能があるから」っていう勘違いをしている雰囲気が出てしまっていたのだと思います。それで仕事を干されたこともありましたし、本当にあの時の自分は幼かったなと思いますね。
西内：では、なぜ天狗ではなくなったんですか？
江梨：やはり、「imaii」を辞めてからですね。「imaii」という大きなブランドが外れて自分一人になり自分の無力さに気づいたんです。これまでは私ではなく「imaii」のブランドがあったからやってこれたんだ、とその時思いましたね。後ろ盾がなくなったとき、そこに残ったのは虚勢をはる才能だけだったんです。それではダメだと改心し、また1から出直すことにしたんです。
西内：その学びがあったからこそ、今こうして一流のカラーリストとして、経営者として成功されている江梨さんがいるのですね。
江梨：いえいえ、まだまだ勉強中ですが、いつでも一番にお客様に似合うカラーを提案していくことができたらなと思っています。「カラーリスト」というと奇抜なカラーを想像する人もいますが、私の得意分野は「似合わせ」なんです。いかにそれぞれのお客様に似合うカラーを提案して、綺麗に染め上げるか。そのことを追求し、お客様に喜んでいただけるように今後も頑張っていきたいと思います。
25歳にして日本一のヘアカラーリストとして全国に名を轟かせ、波乱万丈な経験を経た後、独立。代官山という一等地でサロンを営む塩崎江梨さんを見て、誰もがこう思うのではないでしょうか...「彼女はやり手の経営者だ」。しかし、塩崎江梨さんはあくまでご自身を「職人」と言います。その突き抜けた「カラー技術へのこだわり」「職人技」が、人々の髪を、美しく染め上げているのですね。
「似合わせ」を何より得意とする塩崎江梨さん。きっと、江梨さんはご自身の「愛人顔」にも似合う色を一番に分かっているからこそ、こんなに美しく綺麗な「愛人顔」でいられるのでしょう。
そしてその美しさは、熟女になっても続いていくこと間違い無し。熟女好きの彼と、おじ様好きの江梨さんに、幸あれ。
Text＆Edit：Yuko Nishiuchi
Photo：Tatsuya Hamamura
【LADIANCE&Co beauty bar.】代官山から徒歩1分にあるトータルビューティーサロン。カラーリストの塩崎江梨さん、スタイリストの横溝祥子さんがオーナーを勤める。カット、カラー、ネイル、メイクをそれぞれの専門家が個々に似合う「美しさ」を提案してくれるのが魅力。もちろん、塩崎江梨さんご指名でのカラーのみの来店も可。確かな技術と落ち着いた店内で一人一人に丁寧に向き合ってくれる接客スタイルが「都心の中の憩いの場」として人気を集めるサロンです。
▶︎サロンホームページ
http://www.ladiance-co.jp/
▶︎クーポン情報
http://beautynavi.woman.excite.co.jp/salon/27784
▶︎塩崎江梨 Instagram
https://www.instagram.com/eri_ladiance/
電話：050-3759-9668
住所：〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町23-5 ネクストワンビル 4F
（代官山駅から徒歩1分）
営業時間： 平日 11：00～20：00、土日祝 10：00～19：00
定休日：火曜日
【ライター：西内悠子】1988年、兵庫県西宮市出身。同志社大学文学部哲学科卒。avexへの就職を期に上京し、3年半のOL経験を経てフリーライターとなる。在学時に自身のアメーバブログが大学生ランキング1位を獲得。会社員時代、dマガジン「Hot-Dog PRESS（講談社）」にて「おじさんハンター」として連載をしていた。
