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LIFESTYLE Special Talk

柔道オリンピック3連覇
野村忠宏、今だから語る
「ナルシストのススメ」【前編】

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全ての練習に、まるで試合のように取り組む

野村:そうですね、もちろん転機もあったのですが、一番大きいのは小・中学生の頃からの積み重ねだと思います。弱いなりに、「絶対強くなる」という志は常に忘れずに目標を持ってやっていましたから。

干場:その、負けても折れない心、本当に見習いたいです。では、野村さんの仰る「転機」というのは、いつ、どのようなものだったのでしょうか?

野村:それは、大学生の頃、細川先生という僕の柔道の恩師からの言葉ですね。「ホンマに強くなりたいなら、取り組みを変えろ」と言われたんです。僕はそれまで、「練習をこなすこと」ばかりに気を取られていたんですね。その頃、試合形式の乱取りという練習を6分×13本行っていたのですが、取り組みを変えるまでの僕は「あと何本残っている」「あと何分で終わるな」なんて考えながら練習をこなしていたんです。けれど、それではダメだと。

干場:でも、それだけハードな練習を13本となると、後のことを考えたくもなりますよね。

野村:そうなんです。でも、それでは練習時間が無駄になってしまうと。細川先生に言われたのは「13本こなせなかったならそれでも構わないから、とにかく1本1本に全力で集中しろ」という言葉でした。「後のことは気にせんと、出し切れ」と。細川先生にそのことを教えてもらってからは、劇的に取り組みが変わり練習の内容が良くなっていきました。

干場:細川先生の言葉が、野村さんがオリンピック3連覇に登りつめることになる転機というわけですね。

野村:そうですね。細川先生がいなかったら、今の僕は確実に存在していないと思います。でも、細川先生の言葉の重要性に気づけた僕自身も、エラいと言えばエラいんですけどね(笑)。

干場、石田:(笑)。

野村:その細川先生の言葉をもらってからは、練習態度もものすごく変わったんですよ。それまでは「ちょっと疲れてきたな」とか「サボりたいな」と思ったら先生から離れた場所で練習をしていたんですが(笑)、先生に言葉をもらってからは、細川先生に見せつけるような気持ちで、目の前で練習をするようになったんです。「見てもらうのではなく、見せつけてやる」そんな気持ちで毎回の練習に全身全霊で取り組んでいました。全ての練習に試合と同じように取り組むんです。けれど、やっぱりそうやって本気で練習していると本気でツライんですよ。

干場:そうですよね。でも、13本できなかったとしても1本1本に本気で取り組むことが大切なんですもんね。

野村:そうなんです。だから、本気でツライときに細川先生に「もう限界です」と言ったことがあるんですよ。僕の予想では「よくやったから休め」という言葉が返ってくると思ってた。けど、実際細川先生から返ってきた言葉は「お前、そんなもんか」だったんです(笑)。

干場:細川先生、厳しいですね!!

野村:はい、けどそれで負けん気に火がつきましたね。「俺はそんなもんちゃうぞ」と。カチーンときて、練習を再開したんですよ。

干場:再開できたんですか?

野村:そうなんです。意外とやってみると大丈夫なんですよね。そこで、「これまで限界を自分で決めてしまってたんだ」ということに気づいたんです。限界は自分で決めたらダメなんです。かすかに残っているエネルギーを、「何クソ」という気持ちで振り絞る、その経験がなければ3連覇はなかったと思います。

干場:やはり、才能があってもその気概がなければ大成はしないということでしょうか?

野村:そうですね。才能はあるのにナマケてる選手も沢山います。そういう選手が強くなれるかどうかは、ヒントになるような人、言葉との出会いに気付いて、自分を変えられるかどうかなんですよね。そこに気付けずに、いつまでも人に「ああしろ、こうしろ」と言われて練習しているような選手はダメですね、底が見えています。

干場:たしかにそうですね。その意味ではやはり、細川先生の言葉に気づく能力があった野村さんは、まずその点において才能があったんですね。

金メダルの秘訣は、究極のナルシスト!?

野村:そうなんですよ(笑)。こんなことを言うので、僕はよく人から「究極のナルシストや」と言われるんですけど、柔道においてだけはそう言われても良いと思っているんです(笑)。柔道以外は負けたっていい。でも、自分で選んだ柔道だけは「負けたくない」「自分はこうありたい」「格好良くありたい」という自意識が人一倍強い。だからこそ、少しでもヒントになるような人や言葉と出会えばそれを自分にどう当てはめて生かせるかを常に考えるんです。この「究極のナルシスト」という要素も、3連覇には不可欠なものだったと思いますね(笑)。

干場:では、柔道の試合中の行動についても、メディアに向けて「格好良い自分」を演出しているようなこともあるんでしょうか?

野村:それはないですね。やはり柔道は一対一の格闘技で一瞬の油断も許されないので、メディアに向けてパフォーマンスを演出している余裕は全くないです。完全に自分の世界をつくってそれに集中しているので、笑顔もないですしね。僕は、「試合に笑顔はいらない」と思ってるんですよ。そんなことにエネルギーを使う余裕はありませんし、試合の目的はあくまで勝つことですから。

石田:でも、試合以外のプライベートの野村さんは常に笑顔で親しみやすいイメージですよね。その笑顔が本気になる境界線というのは、どこなのでしょうか?

野村:やはり、柔道衣を着た瞬間ですね。その瞬間に笑顔は消え顔が変わり、戦いのモードに入ります。

干場:でも、今横で拝見していても、やはり笑顔とは言え普通の人とは目の鋭さが全然違うんですよね。目が合うと、圧倒されてしまうような目力です。それに、スーツもピシっと着こなされていますよね。

野村のスーツの着こなしは、
まるで「007」のダニエルクレイグ

野村:ありがとうございます。ファッション界のプロにそう言っていただけるなんて光栄です。

干場:僕は長年ファッション界で色々な人のスーツを見てきましたが、ここまでピシっとスーツを着こなされている方って少ないですよ。スーツはどちらのブランドですか?

⇒編集長も唸る着こなし!!
野村忠宏が愛用するスーツブランドとは!?
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