干場:どこにいったんですか?
ロバート:シンガポールのブギスストリートです。当時のシンガポールって今からは想像できないくらい猥雑で、ブギスストリートには売春地帯があったんです。今だとお目にかかれないような危ないものが売られているほんとにカオスな150mくらいの一本道で。
干場:アメ横みたいな感じですか。
ロバート:中身は違いますけどガヤガヤした雰囲気はそうですね。飾り窓みたいなところに女性が座ってて、お客が選んだりとかね。屋台もいっぱいあったし…僕そういう場所大好きなんです。
印象に残っていたのは、道の一番最後のほうにかっこいいカフェが2、3軒あって、ヨーロッパの水兵たちがたまっていたりするんですけど、そこのウエイトレスがみんな美人ですごい背が高いんですよ。でもよく見るとみんな何か怪しい雰囲気で。風貌がちょっと変なんです、デカすぎるんです!
聞くところによると、当時はシンガポールは性転換手術が安かったから、性転換しに来て、手術を待ちがてらそこでバイトしてるんです。ニューハーフの方たちが。でも本当にぱっと見わかんないですよ。「西洋の女の人にしても大きいな」って思うくらいです。
で、その近くにすごい怪しげな倉庫があって、倉庫の階段を登って廊下の突き当たりまでいって。友達のヒッピーがトントンとノックすると、小窓があいて中の 人が訝しげにこっちをみるんです。そこで友人が「スティーブンだよ。友達2人連れて来た」「顔見せろ」って感じで、顔見せて「OK」って。中には中国人が寝て、クッションひいてまどろんでいるわけですよ。
干場:まさにブルースリーの「燃えよドラゴン」みたいですね。
ロバート:まさに、そうですね。
山本:そういうところほんとにあるんですね。
ロバート:いっぱいありますよ。ラオスなんか未だに多くあるらしいですよ。シンガポールはさすがにないと思いますけどね。
そこでリラックスして、自分の落ち込んだ状態についてもオープンに話して行ったんだけど、今までの不安が無くなって、気持ちがいくぶんと晴れたんです。ヒッピーの友達とはまだ会ったばかりだったけど、「こいついいやつだな。ありがとう」って思いましたね。
干場:ヒッピーってそのスティーブンですか。
ロバート:はい、まだ会って2、3日ぐらいだったんですけど。
山本:よく信じられましたね。
ロバート:いや、なんか当時はそういう世界だったんです。
干場:ヒッピーってやっぱり髪の毛は長かったんですか。
ロバート:みんな長かったです。僕もすごい長かったし、ヒゲも伸ばしていて。スティーブンとそこで初めてゆっくり話し て言われたんです。「お前はインドとかアフガニスタンに行くには体調悪すぎるよ」って。「じゃあどこに行けばいいんだよ」って言ったら、「バリ島っていう 素晴らしいところがあるから」って。