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FASHION Special Talk

POGGYに訊いた
40歳を目前に考える、今とこれから [前編]

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日本だけにとどまらず、世界のファッションシーンからアツい注目を浴びるオトコ、小木“POGGY”基史氏

ユナイテッドアローズ入社後、販売スタッフを経てプレスになり、2006年にはUAラボ(※少数店舗展開で長期的なテストマーケティングを行うことにより事業拡大の可能性を模索する実験店)で「リカー、ウーマン&ティアーズ」をオープン。2010年には新コンセプトブランド「ユナイテッドアローズ&サンズ」を立ち上げ、ディレクターに就任したPOGGYは、1976年生まれなので2016年めでたく40歳を迎えます。

そんな彼が、いまどんなことを考え、40代の10年間をどのように過ごしていくのかじっくりと訊いてみました。

40歳を目前に控えて


—POGGYは1976年生まれなので、今年40歳になるわけですが…

小木“Poggy”基史氏(以下POGGY/敬称略):12月31日生まれなので、39歳を迎えたばかりなんですが、いよいよ40歳が現実味を帯びてきました。

—40歳を迎える心境はいかがですか? あんまり意識しませんか?

POGGY:いやいや。漠然とした焦りのようなものは感じています。自分の周りでも「会社から独立する方がいいのか…」と、考えている人が多い気もします。自分は、会社の中でやりたいこともなんとなく出来るようになってきつつも、社外から受ける話の規模感が大きくなってきて…、そんな話を会社に席を置きながら、どうやって回していけばいいのかを考えることが増えてきました。。

—そんな中でPOGGYが思い描く、40歳からの目標のようなものってありますか?

POGGY:日本のセレクトショップで働く人が大勢いる中で、働く人たちに「店長になる」「バイヤーになる」以外の目標や方向性を示せることができる人間になれたら良いなとは思っています。大好きな会社にいながらも、独立しているような、外部との仕事もガンガンこなしていける存在になりたいなと思っています。

—例えば、どういったことですか?

POGGY:今までは正社員として会社に残るか、契約社員として会社で仕事した分だけ報酬を受けて、それ以外は自分の仕事をこなすか、ほぼこの二択しかなかった気がするんですが、それ以外の方法を自問自答したり、模索していますね。

—POGGYの理想としては、ユナイテッドアローズの社員でありながら、他の仕事も受けていきたいわけですね。


POGGY:なんか都合の良い話に聞こえるかもしれませんが、それが自分の中では簡単なようで難しい。ただ、自分がやりたいって思ったのは、ここ最近のことで。ある憧れの方と上司が食事した際に「小木くんみたいな人がやりたいことを出来るようにならないと、この先のファッション業界はダメになると思うし、彼が欲しい服を悩まず買えたり、いい車に乗れたりするスタイルが確立できないと、ファッション業界に憧れる次の世代が生まれてこない」的なことを仰ってくださったんです。そこら辺から新しい道を考え出して、今までは服のことだけ考えて生きてきたので生活レベルは決して良いとは言えない状況でしたし、現状で満足してしまっている自分がいました。他から話を頂いても断り続けていて、でもそれって自分が旬だから声を掛けてくれただけで、それこそ40歳を越えると、現場との差もどんどん大きくなってしまい、「今のうちにしっかり形にしていかないと自分の未来はないな」って感じてきたんです。

—今は日本だけでなく世界各国のファッションシーンが注目してくれている一方で、歳を重ねていくことで彼らが離れたり、見向きされなくなる恐怖って感じますか?

POGGY:今なんだか「日本のファッション界を背負ってる」っていうような言われ方をすることが多くて、自分ではそんな意識はまったくなかったんですが…、自分がきちんと形を作っていかなくては、という責任感が遅いかもしれないのですが生まれてきています。

—ちなみに、“次のPOGGY”というか、バトンを渡せるような若い世代は育っていますか?

POGGY:いますが、自分の接し方が上手くないのか、ちゃんと育てられてはいないかも…。自分たちが若手だったときは、教えて貰えなくても食らいついて、必死に追いつき追い抜こうと思って努力していましたが、同じやり方では今の若い世代は付いてきてはくれませんし。接し方は変えていかないといけないなと考えています。あとは、会社という組織内で接するとなると、「面白そうで優秀そうだから、多少のミスには目を瞑る」といった特別扱いも難しいですし…。

—教育面については難しそうですよね。あと、歳を重ねると体力的にシンドくなるのは避けられないと思うんですが、そういった怖さはありますか?

POGGY:昔みたいに海外行ったら、取引先とできるだけ色々なところに朝まで顔を出して、そこに流れる空気を味わうというのは難しくなりましたね。

—思いはあっても身体がついていかない?

POGGY:そうですね。意識はあるんですが、身体が動かない…(苦笑)。2年くらい前にニューヨークで、結果ただの脱水症状だったんですが、倒れたことがありまして、そのとき辺りから、このままやってるとヤバいなと思い始めましたね。


—体力の衰えを止めるための対策はしていますか? 最近インスタグラムで息子さんとサッカーしてる画をよく拝見しますが。

POGGY:昔みたいにガンガン飲むのを避けたりくらいですかね。体力の話ではないんですが、息子とサッカーするようになって色々分かるようになったことがあるんです。自分の息子は周りの子どもたちより少し身体が大きいのでドリブルでガツガツ突破して行くタイプなんですが、テクニックのある子には簡単に止められてしまうんです。だから自分的には「フェイントを教えたい」って思ったんですが、先輩コーチは「低学年でフェイントだけを覚えるようになってしまうと、ドリブルでガツガツ突破できない子に育ってしまう」と言われました。自分が今までやってきたことって、世界中で言葉も上手く喋れず気付かずにドリブルで突進して切り開いてこれたけれど、ちゃんとパスを出せるチームも作っていかないといけなかったんだなって、37歳くらいでハッと気づいて(笑)。そこから外部の意見もあって、「小木がやってきたことはスゴいことで、世界でも評価されている」って社内でも気づいて貰えて、今まで自分一人とは言わないまでも勝手にやってたと思われていたのが、まだまだではありますが、チーム体制が組めるようになってきました。

—社外の人の方が、POGGYの功績には早く、的確に気づいていましたからね。

POGGY:今、他社のプロダクト・店舗などを見ると、クオリティが格段に上がっていて、かつての「ユナイテッドアローズがNO.1」という評価は既に過去のもので、昔のカッコ良かったときの残像を引きずってくれている方々に支えて貰っているのが現状だと思っています。だから、外部から来る仕事もフリーのような立場で受けていかないと、周囲の人たちには勝てないし、お客様の感動を呼ぶことは出来ないと思うんですよね。本来の仕事をおざなりにせず、勝てる仕組みをどう作っていくかが大きな課題ですね。

—売り上げなど当然のハードルはありますが、面白い物作り・店作りってファッションにおいては絶対に必要ですからね。

POGGY:ユナイテッドアローズが当初掲げていた「百貨店じゃなくて十貨店をやる」という、絞り込んだ強さというのを自分たちも改めて目指していかないといけない。ユナイテッドアローズ&サンズに関しては、他社のセレクトができていなかったことを掴みかけてきている雰囲気は肌で感じるんですが、それを正確に発信できていないので正していかなくては、と思っています。

—ユナイテッドアローズ&サンズの直近の目標はありますか?

POGGY:ユナイテッドアローズが持つ本来の強みを見直して、従来のセレクトショップがやっていないような、新しいトラッドの解釈と、KITHだったり一緒に取り組みをできる新たな世代の人たちとカルチャーを作っていきたいです。


—40歳を目前にして、POGGY個人としてのスタイルは確立しましたか?

POGGYMP di Massimo Piomboのスーツのインナーに、10代の子が好きそうなHUFのベースボールシャツ着て、ハットかぶって、スニーカー履いてというスタイルが好きで。自分たちでは「サルトリア ストリートスタイル」と呼んでいますが(笑)、スタイルの確立は出来てきているとは思います。海外の人からもそういうイメージで見て貰えている気がしますし。その部分はブレることなく、新しいものをどう取り入れて肉付けしていくかを考えていきたい。例えば、大久保篤志さんのThe Stylist Japanを見ていると、ブランド設立から10年経っているけど、変わらない良さがある。不変のスタイルが確立されていて、そこに今好きなエッセンスが上手く足されているんです。自分はそこまで辿り着けなくても、目指したいところではありますね。


—コアがしっかりあって、遊びを足せるかどうかですね。ちなみに、最近刺激を受けている人や物なんかはありますか?

POGGY:ニューヨークのKITHをやっているロニー・フィーグが考えていること、店作りの発想などから刺激を受けることは多いですね。あとは、ロンドンだとART COMES FIRSTの2人とか、パリだとPIGALLEの面々など。2015年までは本当に色々な人たちと付き合ってきて、「何が、ユナイテッドアローズ&サンズにとって、POGGY個人として、大切なのか?」というのは結構みんなで話し合って、ようやく見えてきたというか。誰にも彼にもいい顔するのはお互いにとって良くないし考え直していこうと…。この話し合いが、2015年一番疲れた仕事だった気がします(笑)。

前編はここまで。後編はこちら

小木"Poggy"基史さん
ユナイテッドアローズ&サンズ ディレクター兼バイヤー/
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館 ディレクター

1997年ユナイテッドアローズに入社後、販売スタッフ、プレスを務めた後、2006年にリカー、ウーマン&ティアーズをオープン。日本のファッションシーンに新風を吹き込む。その後、2010年からはユナイテッドアローズ&サンズのディレクター/バイヤーを務め、さまざまな新しくて面白い展開に取り組む。

Photo:Yasuharu Imai
Text:Ryutaro Yanaka



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