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FASHION

【連載】カルロ黒部の
GENTLEMEN'S STYLE
第15回 アントニオ・リヴェラーノさん

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サルトリア・フィオレンティーナを代表する巨匠

「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」第15回目はアントニオ・リヴェラーノさん(Antonio Liverano)の登場です。

イタリアを代表する高級素材メーカー、ヴィターレ・バルべリス・カノニコ社のレセプションパーティーで久しぶりにお会いしたリヴェラーノさんは、相変わらずの優しい笑顔で出迎えてくれました。

リヴェラーノさんは1937年プーリア州ターラントの生まれ。長靴の踵部分のこの街は紀元前7世紀スパルタから逃れた人々が設立した古い歴史があります。プーリア州はレース細工などの凝ったウエディングドレスの産地で、手仕事を大切にする伝統があります。リヴェラーノさんも7歳からサルトリアの修行を始めます。その後、年の離れた兄ルイジさんが1948年フィレンツェにサルトリアを開き、自身も移り住みます。兄弟の名を冠したLIVERANO&LIVERANOの長い歴史のスタートです。修行を始めてから70年以上、今ではサルトリア・フィオレンティーナを代表する巨匠がリヴェラーノさんなのです。

この日はレセプションパーティーに相応しいグレイッシュネイビーのバーズアイ素材の3ピーススーツでした。広めに設定された肩幅に対してシェイプしたウエストラインという本来は男性的なフォルムなのですが、優しい印象を与えるのは、肩パッドなどの副資材を極力抑えて肩甲骨の付け根部分まで緩やかにカーブする肩に秘密があります。フロントの緩やかな曲線を描くカットやラペルのエッジ部分の丸みのある処理も優しさを与えています。

太いラペルのゴージラインは肩線に対してかなり下を向いています。ただし良くみると下衿の先が若干、上を向いているのが分かりますでしょうか。ラペルやショルダーは言わばスーツの顔で、どこのサルトが作ったのかが分かる大切なポイントなのです。フロントダーツはなく、その分、脇のダーツで絞っています。切り替えがないため格子柄のスーツを仕立てた際は特にすっきり見えるのです。

ヴェストは6ボタンで、一番下は捨てボタン、4ポケット、若干Vゾーンが狭い伝統的なデザインです。3ピーススーツはきちんとした印象を与えることが出来るので上手く活用したいアイテムです。

Vゾーンはラヴェンダーにネイビーのドットタイ、淡いサックスブルーのロイヤルオックスフォードのワイドスプレッドカラーシャツ、白の3ピークドポケットチーフでした。

「芸術の街フィレンツェは美術館の絵画はもちろんですが、街を歩いているだけでも歴史的建造物や自然が私に色のインスピレーションを与えてくれるのです。紳士服にとってネイビーやチャコールグレーが基本色であるのは変わりありませんが、たまに色を取り入れると気分が高揚します。それはネクタイ1本だけでも良いのです。」と語ってくれました。

時計はセイコーのダイバーズウォッチにミリタリーベルトという質実剛健さを感じるものでした。面白いのは鋏を持つ右手にはめている点です。おそらく鋏で時計を傷つけないためなのでしょう。

2本のリバースプリーツが施されたトラウザーズには、ゴールドのウォレットチェーンが垂らされていました。お嬢様のご主人の手作りだそうです。金細工の盛んなフィレンツェらしいアクセサリーだと思いました。

シューズはチャーチの黒の外羽根式プレーントゥでした。石畳の街を歩くには、しっかりした英国高級紳士靴の人気が高いのです。

アントニオ・リヴェラーノさんの装いは、街中や自然から色のインスピレーションを得る大切さや、伝統を基本にしながら、たまにはネクタイ1本でも色を取り入れる楽しさを改めて我々に教えてくれるのです。

Text:Carlo Kurobe

カルロ黒部(黒部和夫)
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中。

 



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