素材やデザインに妥協はしない
坂本社長、独立に込めた信念
1000円台の安価なものが大多数を占めるiPhoneケース市場。その市場において、1万円を超える高級品ながらビジネスマンの熱い支持を集めているブランドがある。それが、「世界一のiPhoneケース」をテーマに掲げるGRAMASだ。
GRAMASは、選び抜いた素材を生かした製品づくりで、他とは一線を画する高いクオリティの製品を次々と世に送り出している。実は、GRAMASをプロデュースする坂本ラヂヲは、ここ4年で80倍の売り上げを達成している業界大注目の企業なのだ。
今回は、同社の坂本雄一社長と『FORZA STYLE』編集長・干場義雅が、「世界一カッコいいiPhoneケース」について語り合った。
高級財布の手法で、ステッチを施す
干場:GRAMASシリーズの中でも一番売れているというこのモデルLC634シリーズ、(http://shop.sakamotoradio.com/gramas/lc634/)、本当にカッコいいですね。カバーを開いたときの色が鮮やかでドキッとさせられます。
坂本:ありがとうございます。カバー付きのタイプはどうしても厚くなりがちなので、ひたすら薄くスタイリッシュに仕上げることに注力しました。そのために、革そのものやフレームを薄く加工しているんですよ。
干場:たしかに、カバー付きでこれほどまでにスタイリッシュでビジネスシーンに合うものは他に見たことがありません。しかし、薄いがゆえに強度には問題はないのでしょうか?
坂本:そのために、エッジ部分を折り込んでステッチを施すことで強度を高めています。これは、「菊寄せ」と呼ばれる手法で職人の高い技術力が必要なんですよ。高級な財布等でよく用いられている手法です。
干場:iPhoneケースに高級財布で用いられる手法とは贅沢ですね。ビジネスマンたるもの、何よりも目につくiPhoneケースだからこそ、やはりこれくらいに贅沢な拘りの一品を身に付けたいものです。
坂本:ありがとうございます。細部に拘りがあるビジネスマンは、やはり取引先からも女性からも魅力的に映るものだと思います。是非その拘りの表現として、拘りのステッチを施したGRAMASのケースを使っていただけると嬉しいですね。
マグネット式カバーが、スマートな手つきを演出
干場:カバーにマグネットがついていて、吸いつくように閉まるのもいいですね。まるで、高級車のドアがズバッと閉まるのと同じような感覚です。でも、マグネットがついていることで方位磁針アプリが狂うことはないんでしょうか?
坂本:たしかに方位磁針アプリが誤作動してしまうことはあります。ただ、僕自身はこのアプリをまったく使わないので……。それに、マグネットを使わないタイプだとスナップをつけたりするのですが、開閉の手間がかかるしスタイリッシュさも損なわれがちですよね。
干場:たしかに、方位磁針アプリって全く使いませんね(笑)やはり、マグネット式の方がケースを開閉する手つきもスタイリッシュになりますし、スマートなビジネスマンを目指す男性にとっては非常に嬉しい仕様です。
坂本:そう思います。きっと干場さんや僕と同じように考える人が日本には1000人ぐらいいるんじゃないかな、と思って。「マーケティングをしないマーケティング」ですね(笑)
「値段もデザインも妥協したくない」坂本社長の独立の決意
干場:たしかに、結局は形に囚われたマーケティングよりも「自分であれば何が欲しいか」を突き詰めることこそが真のマーケティングであると思います。ちなみに「GRAMAS」は、坂本さんが考えた造語だそうですが、どのような由来なんでしょうか?
坂本:「Generous Raw Material Stuff」(豊潤な素材の良さを生かした製品づくり) の頭文字をとったものなんですが、実はこれは後付けなんですよ。ブランド名を考えるにあたってまずイメージしたのは、ハイブランド。グッチやルイ・ヴィトン、ジョルジオ・アルマーニなど、ハイブランドには濁音が入っていますよね。そのため、濁音でなおかつ男性っぽさを感じさせる頭文字を考えた結果、思いついたのが「G」だったんです。
干場:ハイブランドには濁音が入っているというのは新しい発見でした。ちなみに、坂本ラヂヲを立ち上げたのは2009年とのことですが、それまではどんなお仕事をされていたんですか?
坂本:もとは、某大手オーディオメーカーに勤めていて、20年にわたり商品企画を担当し、テレビデオやヘッドフォンステレオなどを作っていました。当時から、ものづくりへの思い入れは深かった。ただ、サラリーマンである以上、「自分が何を作りたいか」よりも「売れるもの」を作らなくてはいけない。価格面を考えると、素材やデザインについても妥協しなければならないこともありますし、自分の理想との間で葛藤したこともあったんです。
干場:その葛藤をきっかけに独立を決意されたんですか?
坂本:ええ。ずっと希望はしていたんですが、独立する勇気が出なかった。当時私は40歳を過ぎたばかりで、家庭もありますし自宅のローンだって残っていましたから。ただ、最後に在籍した会社が、ありがたいことに「君の好きなものを企画していいよ」と言ってくれたので、企画から生産までのラインをすべて担当させてもらうことができたんです。「お風呂でテレビが見られたらいいなぁ」という思いつきから防水テレビを企画したこともありました。他には、「ジョギングの際に落ちないヘッドフォンがあったら便利だな」と感じて、耳にひっかけるタイプのiPodのヘッドフォンを開発したり。ここで3年間修行させてもらったことで独立への下準備ができたんです。そして、50代を前にして独立し、知人からもお金を借りて出資金を捻出し、坂本ラヂヲを立ち上げました。
干場:最後に素晴らしい環境で修行をされたのですね。しかし、その素晴らしい環境があってもなお独立の決意を曲げない坂本さんの信念にはモノ作りへの徹底した拘りが感じられます。ちなみに、独立後はすぐに社員の方を雇って業務を拡大していったのですか?