フランスのエレガンスを体現する紳士
「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」第11回目は大住憲生さん(会社役員、ファッションディレクター)の登場です。
多くのお洒落な紳士達がいる日本のファッション業界の中で、大住さんの装いで特に感じるのが、フランスのエレガンスを体現されている点です。
この日は、ビスポークテイラーで仕立てたネイビーフランネルのダブルブレスト6ボタンのジャケットにチャコールグレーのサキソニートラウザーズというシックないでたちでした。
注目すべきは構築的な肩や胸回り、ぴったり張り付くようなウエストラインや美しい背中のラインです。まさにフランス紳士服の伝統的なシルエットです。パリのチフォネリなどのタイユールと呼ばれるビスポークテイラーから、イヴ・サンローランのようなデザイナーまで、このシルエットは共通しています。
もともとご身長がありスマートな大住さんですが、腕を降ろした時に、ボディラインとの間に隙間が見えることで、より美しいシルエットが強調されるのです。
Vゾーンを飾るのは、エルメスのウールタイです。「ロカバール」(Rocabar)と呼ばれる乗馬用ブランケットで、1930年代にイギリス出身の職人が名付けました。オレンジ、イエロー、ネイビーの華やかなストライプタイも、他のアイテムの色を抑えることで、より引き立っています。
また注目したのが白のボリュームのあるレギュラーカラーシャツです。最近では、ワイドスプレッドカラーシャツがすっかり定着しましたが、メンズシャツの基本であるレギュラーカラーシャツの魅力を再発見させて頂きました。
ダブルカフスの袖口にあしらわれていたのは、エルメスのセリエのカフリンクスとシルバーのブレスレットでした。上品でさりげない袖元のアクセサリーはパーティー会場で乾杯をする際に華やぎを与えてくれるのです。
シューズはライトベージュのサイドゴアブーツで、ロカバールのウールタイととても良く調和していました。
トラウザーズ裾口の敢えてのシングルカフスにも注目しました。ターンナップカフスと呼ばれるダブルカフスより歴史的にも古くフォーマル性も高いのです。ブーツと合わせた時にラインをすっきり見せてくれる効果もあります。
今回は拝見いたしませんでしたが、サイドゴアブーツの下にはパリの名店アルニスで購入された美しい色のホーズをきっと履かれていたことでしょう。紳士は目に見えないところまで気を使うものなのです。
大住さんの着こなしは、イギリス、アメリカ、イタリアと並び、長い紳士服の歴史を持つフランスの、洗練された男のエレガンスとは何かを我々に教えてくれるのです。
Text:Carlo Kurobe
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中。