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FASHION

【連載】カルロ黒部の
GENTLEMEN'S STYLE
第10回 ジェレミー・ハケットさん 後編

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こだわりのディテールが満載です

「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」前回に続き、ジェレミー・ハケットさん(HACKETT LONDON創業者兼会長)の後編では、驚くほど魅力的なディテールの数々をご紹介して頂きます。

「トラウザーズの撮影は今回の来日で初めてだよ」と笑いながらジャケットを脱いで見せてくれたブラッシュドコットン製ベルトレス1プリーツのトラウザーズは、サイドエクステンションタブの付いた、サヴィル・ロウ伝統のデザインでした。しかし良く見るとフラップポケットの上に同素材でHACKETTさんのイニシャルのHが縫い付けられています。普段ジャケットで隠れてしまう場所の遊び心を感じるディテールです。

ちなみに日本の紳士服業界ではヒップポケットのことを「ピスポケット」と呼ぶのですが、その昔、護身用にピストルを差していたことにちなむのです。

この日、ハケットさんが履いていたのはJ.M.WESTONのGOLFのビスポークシューズでした。ブラウンの2トーンレザーで、甲の部分には英国FOX BROTHERS社の1940年代初頭の軍用コート素材を使用しています。

1950年代までフランネルの商標を保持して、その代名詞と言われるフォックス・ブラザーズ社は、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて英国軍の軍用コート素材を供給していたのです。男心がくすぐられる、こだわりのエピソードです。

そしてこのシューズにも魅力的なディテールが隠されていました。踵部分の見えにくい場所にJEREMYさんのJのイニシャルがピンキングされているのです。自分にしか分からない宝さがしのような楽しさを感じました。

また英国紳士がなぜ赤などのソックスを好むのかを伺ってみました。

英国有名パブリックスクールの学生達が、スクールカラーのジャケットやソックスを身に着けて来た伝統に由来するそうです。

卒業後、ベーシックでクラシックなダークスーツ姿になっても、ソックスだけは赤などを合わせて自分らしさを、さりげなくアピールする紳士が多いのです。

英国紳士は小物にもこだわりが満載でした。眼鏡はこの秋冬、本国で発表されたコレクションで、テンプルにHACKETTのHのイニシャルが上品に配されています。その日の装いでフレームの色を変えるそうです。

HACKETT LONDONのオリジナルのボールペンは白とブルーのストライプです。最初にオープンしたショップの壁を、このストライプにしたのにちなむそうです。今日では、ジャケットの袖裏に使用するなど、アイコンのひとつとなっています。

名刺も素晴らしい逸品でした。ロンドン、ボンドストリートの老舗ステーショナリーブランド、スマイソン社製の高級コットンペーパーにエングレーヴィング(Engraving)されたものです。銅板をグレーバーで彫刻してインクを詰めて転写する凹版技法で高度で熟練した技術が必要なのと高価なため、今日では、ほとんど見かけません。印字部分が盛り上がるのが特徴なのですが、頂いたお名刺を裏返すと、その部分がへこんでいるのが分かります。ローラーで圧力を掛けた跡なのですが、これが本物のエングレーヴィングの証なのです。

また家を出る際には、ハンカチーフは必ずポケットに携行するそうです。マナーを大切にする英国紳士ならではと思いました。

ジェレミー・ハケットさんの着こなしは、まさにご自身の最新秋冬コレクションにも貫かれている、アンダーステートメントを体現するものでした。声高に主張はしないが、さりげなく静かに自分らしさやスタイルを表現する大切さを、我々に教えてくれるのです。

クラシックで正統でありながら、少しだけ遊び心も忍ばせたいビジネスマンが、自信を持って身にまとえるのが、紳士服のルーツ英国発のブランドHACKETT LONDONの魅力だと思います。


Text:Carlo Kurobe

カルロ黒部(黒部和夫)
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中

 



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