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【千葉スペシャル】染谷将太、菊池凛子も並ぶ靴磨きの超絶テク

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「若い頃は、フクシマで
働いていたんだ」


――え~、なんだろう?
「水平を図った後、誤差が生じますよね、1000分の1ミリ。それを修正するのに……一番原始的なことやってます」

――たぶん答え出ないです(笑)。教えてください。
「砥石」

――砥石で削るんですか!
「それが一番原始的だった。この文明の社会で。砥石でシコシコ削って1000分の1を修正するんだ」

――そのときに培った手先の器用さも、靴磨きに活かされていますか?
「いいや、そういうことじゃない。改善。改善する精神は活きている。溶剤を扱っているときに、『成分』を熟知することが大事だとわかった。鉄でさえも寝かせる。特に発電機の芯は40センチある。何でも寝かせないとダメなんだって。作ってすぐに据え付けるもんじゃないんだ

朴訥な口調だが、出てくる言葉は本質を突いている。思わず身を乗り出して、話に夢中になってしまう

――寝かせてるうちに大きさが変わってくるということですか?
「大きさじゃないんですよ。粒子が落ち着くんですよ。靴のクリームも同じで、粒子を落ち着かせると、いい艶が出ていい状態になるんですよ。塗ったものを落ち着かせないとダメなんです。革が柔らかくなってくれないんです。市販の靴クリームは、要するにあまりいい状態になってないんだ。素人向けに売ってるから使いづらいんです。なぜかというと、寝かせていないんだね。革の柔らかみもその辺で変わってくる」

――粒子を寝かせた、落ち着かせたクリームでやってもらうと革が柔らかくなる?
「そういうことですね」

――科学ですね。
「科学の知識が相当ないとできないです。私は火力や原発の現場でも働いてきたから、ちょっとはその辺がわかります。もう30年以上も前だけど、20代のときは福島第一や第二にもいました

千葉は、3・11でメルトダウンした福島第一原発の中で働いていたこともあったという。靴磨き職人と原発……。容易には結びつかないが、千葉の人生の中では地続きだ。

――メルトダウンした、福島第一で働いていたんですね。私も週刊誌の部署にいたときに、爆発直前にヘリコプターで上空を撮影しました。
「うん、だからあそこにいたんだ。当時から津波が必ず来るのはわかっていた。問題は、『いつ来るのか』だった。これがまったく見当もつかなくてね……。明日かも知れないし、100年後、一万年後なのか、この違いだけですよ。でも当時からヤバいなとは思ってましたよ、地震の震源地がドンドン日本の内陸に近くなってきていたからね……。ハイお客さん、終わりましたよ
話から覚めれば、足下の靴は見違えるようだ。革の表面ではなく、奥底から気品ある輝きが立ち上っている。思わずスキップを踏みたくなる……大げさではなく、そんな気持ちだ。1000円を手渡し、「また来ます」と言って席を立つ。

振り返ると、背後の行列はさらに伸びていた。

Photo:Yonju Kim
Text:Yoshihide Kurihara

【問い合わせ】
靴磨き 千葉スペシャル
東京都千代田区有楽町2-10-1
東京交通会館ビル1階 三省堂書店前
03-3872-1866
090-8923-0263
営業:平日9:00 ~19:00、土曜日 9:30~19:00、日曜、祝日は休業http://www.kotsukaikan.co.jp/clinic_service/service/307/



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