ドレスウォッチ並みの美観を持つ
ローズゴールドのクロノグラフは必見です!
そろそろ自分らしい腕時計との出会いを真剣に考えている40男の皆様に、『FORZA STYLE(フォルツァスタイル)』がオススメしたい選択肢のひとつが“ヴィンテージウォッチ”です。
その世界は奥深く、手頃な価格で買えるコスパ重視の時計もあれば、果てはオークションで競り落とされる数千万円台の投機の対象となるプレミアムな個体も数多く存在します。実際問題、ヴィンテージって聞くと妙に敷居が高く感じられたり、あまりの人気から偽物が出まわっているグレーな世界であることは否めません。それもあって、どうも二の足を踏んでしまっている方が大勢いるかと思います。
そこでこの連載では、ウンチクに寄り過ぎず、今どきのファッションにもしっかりとハマる腕時計であることを前提にしながら、絶対にはずさない名機の購入ガイダンスを中心に、さまざまな角度からヴィンテージウォッチの魅力を紹介していきます。
今回はいつもより少しマニアックな話になります(笑)。ヴィンテージウォッチは全般的に外装もムーブメントも総じてクオリティが高いものが多いのですが、その花形と呼ぶにふさわしいジャンルが“クロノグラフ”なのです。
今も昔も変わらず腕時計の世界でいえることは、そもそもクロノグラフの製作、とりわけムーブメントの開発は非常に難しいものでして……。それをもっともわかりやすく物語るのが、いわゆるクオーツショックの前に起きた1960年代後半の自動巻きクロノグラフムーブメントの開発でした。クロノマティックにせよ、エル・プリメロにせよ、おそらく一社ではコスト・技術的にも製品化までたどり着けなかったことから鑑みても、それは一目瞭然です。
ヴィンテージウォッチの世界に限っていえば、名機と呼ばれるクロノグラフ専用ムーブメントは基本的に手巻きです。なにを重視するかにもよりますが、クオリティなら第一次の全盛期は1930~1940年代頃、性能に関しては成熟した1970年前後と見るのが妥当かもしれません。
手巻き(Cal.30CH)、18KRGケース、ケース36㎜径/98万円(税抜)【問い合わせ】
プライベートアイズ 03-3940-0707 http://www.watchnet.co.jp/private-eyes
ヴィンテージの世界でクロノグラフを語る上で、絶対に欠かせないブランドがロンジンです。このメーカーは、懐中時計の時代からクロノグラフの製作を行っており、いち早くサイズダウンした腕時計用のクロノグラフの開発に成功した名門中の名門です。
当時のスイスは基本的には分業制で時計の製造を行っていたことやクロノグラフのムーブメントの開発がものすごくハードルが高かったことからも、クロノグラフの製造に特化したエボーシュメーカーが数多く存在しました。あのパテック フィリップですらバルジュー社のエボーシュをブラッシュアップして使っていましたし、もっと分かりやすいところだと、手巻き時代のロレックスの「コスモグラフ デイトナ」はすべて、バルジューのCal.72をベースにしたものを搭載しています。
つまり、自社でムーブメントの開発からクロノグラフを製造できるメーカーはごく僅かであったことから、ロンジンはこの分野における究極のエキスパートに数えられるのです。
クロノグラフの愛好家は、腕時計のモデルというよりも、中身のムーブメントを重視してコレクトされている方が多いのですが、ロンジンにもその対象となる名機が存在します。それがものすごく堅牢に設計された機能美に溢れる傑作Cal.13ZNです。このキャリバーが入っている個体であれば、まず100万円オーバーは確定ですが、希少性やクオリティから考えれば、もしかしたらこれでもこなれた部類の価格なのかもしれませんね。
前置きが長くて恐縮ですが、いよいよ本題に入ります(笑)。この問答無用の素晴らしいコンディションのロンジンのクロノグラフは、フライバック機構を備えたもうひとつの名機Cal.30CHが搭載された優良な個体です。
13ZNと30CHの違いを述べると、前者が最高級の作りかつ希少性の高いムーブメントだとすると、後者はどちらかといえば量産向けで、比較的入手がしやすいことが特徴として挙がります。ロンジン特有の堅牢な設計は健在ですから、実用という点ではもう申し分ありません。
この個体の最大の魅力。それは実はムーブメントではなく、見るからに優雅な外装だに尽きます。大変めずらしいローズゴールドのケースに、完璧な文字盤のコンディション。36mmという小振りなケースでありながら、下手な大型の腕時計を上回る圧倒的な存在感……。クロコダイルのイタリアンストラップとの組み合わせはドレスウォッチさながらの上品な佇まいだといえるでしょう。
腕時計の黄金時代である1960年代の個体であることからも、スペースエイジ的な1970年代のデザインと違い、ディテールは実にクラッシック。12時間積算計が付かない古典的な2レジスターのダイヤルやスクウェア型のプッシャーは王道的な意匠です。
機能や外装に基づくあらゆる“美”が詰まったロンジンのクロノグラフ。状態のいいものだとそれなりの価格になりますが、ヴィンテージクロノグラフの魅力をすべて押さえている個体が多いので、かなりオススメです。ありきたりの腕時計じゃ物足りないお考えの40男の皆様の腕元にふさわしい最高級のクロノグラフはいかがでしょうか? 小振りなサイズ感からも、ファッションとの親和性もほぼ完璧ですよ。
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE