コスパ的にも申し分ない
角形時計の絶対王者
そろそろ自分らしい腕時計との出会いを真剣に考えている40男の皆様に、『FORZA STYLE(フォルツァスタイル)』がオススメしたい選択肢のひとつが“ヴィンテージウォッチ”です。
その世界は奥深く、手頃な価格で買えるコスパ重視の時計もあれば、果てはオークションで競り落とされる数千万円台の投機の対象となるプレミアムな個体も数多く存在します。実際問題、ヴィンテージって聞くと妙に敷居が高く感じられたり、あまりの人気から偽物が出まわっているグレーな世界であることは否めません。それもあって、どうも二の足を踏んでしまっている方が大勢いると思います。
そこで、この連載では、ウンチクに寄り過ぎず、今どきのファッションにもしっかりとハマる腕時計であることを前提に、絶対にはずさない名機の購入ガイダンスを中心に、いくつかの切り口から幅広くヴィンテージウォッチを紹介していきます。
これまでロレックスの定番モデルを立て続けに3本掲載してきましたが、今回は少し路線を変え、カルティエの名作「タンク」のヴィンテージモデルを紹介します。
今日カルティエというメゾンは、世界屈指のジュエラーであると同時に、類い稀なるウォッチメーカーとして広く知られています。その中でも「タンク」はメゾンを代表するタイムピースとして愛され続けている、傑作中の傑作です。
何げなくヴィンテージウォッチを探していると、ふと目にするのが、“レクタンギュラー”と呼ばれる長方形の角形時計。10万円を切る良質なアメリカンブランドの逸品から、数百万はくだらない完全なるコレクターズアイテムとなるロレックスやパテック・フィリップの一級のレアモデルまでが存在します。そんなレクタンギュラーの一角に立つ「タンク」は少しばかり毛並みが違っていて、これがヴィンテージの世界でも人気を集めている理由に繋がります。
ヴィンテージの角形時計のピークは1930年代頃で、これにはれっきとした理由があります。角型ムーブメントは生産性が悪かった事やその時代の流行りも影響し、生産数が少なったことが希少価値の要因のひとつでもあります。「タンク」とは、このような荒波を乗り越え、現代まで受け継がれている貴重なモデルのひとつなんです。
CARTIER TANK AUTOMATIC
1970年代製、自動巻き(Cal.2670)、18YKGケース、ケースサイズ36mm×27mm/97万2000円(税込)
CARTIER TANK
1970年代製、手巻き(Cal.2512-1)、18KYGケース、ケースサイズ23mm×23mm/56万1600円(税込)
【問い合わせ】
ケアーズ 東京ミッドタウン店 03-6447-2286 http://www.antiquewatch-carese.com/
それを証明するのが、こちらに並ぶ2つの1970年代製のヴィンテージウォッチ。まずは、どちらかといえば、スタンダードな部類に入る手巻きモデルから。誰もが認めざるを得ない美しいデザインと贅沢な18金のイエローゴールドのケースは、小振りながらも腕元に添えると力強い印象を与えてくれます。手巻きゆえ、着け心地も軽やか。アンティークらしく経年変化による文字盤の焼け具合もエクセレント! もう一方の個体は、数年間しか生産されなかったレアな自動巻きのモデル。手巻きと並べるとわかりやすいのですが、サイズがかなり大きめで明らかにメンズウォッチ的な佇まいであることが特徴で、貴重な純正の金無垢尾錠がつくのも嬉しいポイントです。
2つの個体の共通点をいくつか挙げると……。
■70年代の時計ゆえ、ヴィンテージとしては若い部類に入る。もし見つかれば比較的良いコンディションの個体と出会うことも多い。
■世界屈指のジュエラーであるカルティエらしい稀に見る美観と、ヴィンテージらしいエイジングが同時に楽しめる。
■18金のケースに加え、機械式ムーヴメント(手巻きや自動巻き)を搭載している点からも、コスパの面でも抜群に優れ、実用品としても申し分ない。
というように、どちらの個体も腕時計としてのバランスの良さが際立つのですが、残念ながらそれなりにレアであることは否めません。ですから、お金さえあれば買えるという代物ではないので、出会いを大切にしながらじっくり探すのがベストかと。ちなみに今回取材にご協力いただいたケアーズは、日本を代表する ヴィンテージウォッチの専門店。東京ミッドタウン店なら、メンズ・レディースともに良質な「タンク」と出会えるチャンスも……。気になる方は、ぜひパートナーとご来店を!
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE