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5つのキーワードで知る“ナポリの粋”
第5回:ナポリのコーヒー文化

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エスプレッソとモカ

奥深いコーヒー文化をもつイタリア人にとって、美味しいコーヒーは優れた創造力の源とされている。エスプレッソ発祥の地・ナポリを代表するブランド 「KIMBO(キンボ)」のコーヒーを愉しみながら、編集長の干場義雅と国際的なキャリアを持つエスプレッソスペシャリスト中川直也氏が、ナポリの魅力的な人・場 所・暮らしについて、全5回の対談で語り合う。

干場義雅(以下干場) 仕事柄、ヨーロッパに行く機会が多いのですが、コーヒーはイタリアが断トツに美味しいですよね。

中川 僕もそう思います。歴史的なことに少し触れると、コーヒーは1000年以上前にエチオピアのカッファ地方で発見されました。イスラム圏のトルコを経由してヨーロッパやアメリカに広がっていったんです。

干場 最初から今みたいな飲み物だったんですか?

干場 薬というのはカフェインの興奮作用とか?

中川 そうみたいです。コーヒーがもたらす覚醒作用が好意的に受け入れられて、時には万病薬のように紹介される例もあったようです。でも、これはトルコを経由してヨーロッパへと普及する過程で、ある種の宣伝文句のように使われていたんでしょうね(笑)。

干場 それが嗜好品になっていったのはなぜなんでしょう?

中川 やっぱり生豆をローストして飲むようになったからでしょうね。これによって味と香りがそれまでのコーヒーとはまったく違うものになって、人々が競って飲むようになったといわれています。
イタリアに17世紀初めにはヴェネツィアに伝わり、17世紀半ばには最初のコーヒーハウスが開業されたようです。当時、上流階級の間で、カフェでコーヒーを飲みながら討論するのが大流行したんです。また、ナポリは昔から地中海交易の中心でもあったので、16世紀の文献にコーヒーが紹介されているとも言われています。

中川 その通りです。ちなみに現在イタリアには、約800社のコーヒーロースターと16万軒ほどのカフェやバールがあるそうです。イタリアでカッフェというと、お店で飲むエスプレッソと、家庭で飲むモカなどの両方を指すんですが、彼らの間ではその区分がはっきりしているんですよ。

干場 モカってあのチョコレートシロップが入った甘ったるいコーヒーですか?

中川 それはアメリカ式のモカ・コーヒーですね(笑)。イタリアのモカはマッキネッタもしくはカフェティエーラ(ナポリではマッキネッタ登場以前からあった“クックマ”という道具が主流)などの直火式のコーヒー抽出器具で淹れたコーヒーのことを指します。日本ではモカマッキネッタ=直火式エスプレッソマシンと紹介されることが多いので誤解されがちなんですが、そもそもあれは、エスプレッソが開発された100年前の、まだ低い圧力で抽出したエスプレッソを再現しようとして開発されたものでなので、現在のいわゆるイタリアンエスプレッソとは、違うものなんです。

干場 そうなんですか。じゃあモカマッキネッタは、日本でいうところのコーヒーメーカーのようなものなんですか?

中川 そうです。モカ・コーヒーは家庭の味で、エスプレッソはお店で飲む専門店の味という認識ですね。実際、イタリアでは、最良のエスプレッソをお客様に提供するためにイタリアのISO【工業規格】でエスプレッソの抽出量・抽出時間・コーヒー豆量・抽出圧力・抽出温度などをこと細かく規定しているくらいなんです。そのため、開封したての酸化していないコーヒー豆を適切な粗さで挽いて、業務用のエスプレッソマシンを使って優秀なバリスタが淹れたエスプレッソは、飲み終わった後も30分以上もその美味しい余韻が口の中に残ります。それゆえ、“イタリアが生んだ芸術品のひとつ”だなんていわれていますからね(笑)。

干場 職人仕事なんですね。確かにナポリの街を歩くとバールはもちろん、カフェ器具を売っている店も多いですよね。ライバルが多いとそれだけ味のレベルも上がるんでしょうね。 

(次ページに続く)







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