【連載】拝啓、40男（イケフォー）諸君。
『最近、だれかを口説いてますか？』

Vol.1 「リュクスな"イタメシ"×東京・神田」という選択

#リストランテ #シャイー #イタリアン #神田 #銀座 #ワイン #カルパッチョ #肉料理 #パスタ #タルト・タタン #オランデーズソース #アメリカ #フランス #オープンキッチン #テーブル #カウンター #出世不動通り #大坂政寿 #シェフ

2015.3.6 0

オープンキッチンのリストランテにしたわけ

銀座で「テイスト！シャイー」というイタリアンをやっていた大坂シェフが、神田に店を移転させたのは2008年。銀座と神田とでは土地柄がまるで違います。いったいなぜ神田に？

「銀座は家賃が高いからです（笑）。仮にそれが払えたとしても、その分が料理の値段に乗っかってしまいます。それはしたくない。なるべく手頃な価格で料理を楽しんでもらいたいと思って物件を探していたら、ここに出会ったんです。

実は偶然なんですが、この物件のオーナーさんが前の店のお客様だったんです。これも何かの縁なのでしょう。そして、店の前の通りが『出世不動通り』。これはいい！と（笑）」

では、なぜリストランテなのにカウンターなのでしょう。他ではあまり見ない形態です。

「飲食店は見せることが大切です。お客様に安心してもらえるし、楽しんでもらえますから」

「リストランテシャイー」にはテーブル席もありますが、客のほとんどはカウンターに座りたがると大坂シェフ。確かに、シェフが料理をしている姿を間近で見ているのは楽しいですしワクワクします。

「そう感じてもらえるのは嬉しいですね。ただ、オープンキッチンにしたのには、もうひとつ理由があります。お客様がどういう方かを見て、味を調整できます。また、会話をすることでお客様の好みもわかる。すべてのお客様の状況を把握したいし、一人一人のお客様に丁寧に対応したい。そんなことを考えて、オープンキッチンにしたんです」

すべては予約が入った時から始まる

神田に店を構えたのも、オープンキッチンにしたのも客のため――どこまでも客を思う大坂シェフですが、"勝負"は予約が入った時点から始まると言います。

「予約が入ったら、あの人はこういう好みで、この人はこうで……。だから、あの人はここに座ってもらって、こういう料理を出して……とシミュレーションするんです。当日もその人に合わせてテーブルをセッティング。そして、最初にその日の気分や好みを聞いて、イメージしていた通りに料理を出していきます。

ですから、たとえばですが、カウンター4席が予約で埋まっていたとしますよね。そこへ飛び込みで誰かが来られたら、お断りすることもあります。その4名様に最良のサービスを提供したいとシミュレーションしているわけで、その流れが崩れてしまうからです。

もちろん、お断りするのは申し訳ないのですが、ぜひ予約をしてお越し下さいと。それに、こう言うと生意気に聞こえるかもしれませんが、本当に来たいと思って下さっていたら、改めて予約を入れて来て頂けるはずだと、私は確信しています」

一見お断りでもなければ、アーティスト気取りのわがままでもない。その時に対峙している客に集中して最良のサービスを提供したい。大坂シェフの徹底したサービス精神がここに見て取れます。しかし、ここまで客のことを考えるのは大変なことですよね。

「いえ、それが楽しいんです。飲食店なんて無数にありますし、今はどこもおいしいじゃないですか。お金を頂いているんですから、おいしいというのは当たり前。だけど、もう一度来て頂いたり、常連さんになってもらうためには、それだけではだめなんですよね。その人に合った味付けで料理を提供する。それくらいのきめ細かさが必要だと思います。そして、それこそがサービス業じゃないでしょうか」

このセリフは、飲食業店主の単なる料理哲学に留まる話ではありません。同じことはビジネス、あるいは恋愛においても言えます。

商談をするにせよ、こちらの言い分ばかりを通そうとしてはうまくいきません。恋愛も同様です。こうしたい、こうしろと相手に言うだけでは愛想を尽かされます。

どこまで相手のことを考えられるか。そして、どこまでサービス（奉仕）できるか。大坂シェフの言葉は、その料理とともに、私たちの生活、あるいは人生に何かのヒントを与えてくれているようです。さて、誰とデートで使ってみますかね？